いたみわけ。(here and there#19)

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2006-09-25

趣味は夜の散歩です。

夜 出歩くと いろんな人に行き会います。

ここ最近 散歩コースに入っている近所の神社の境内では おかしな二人連れ 10歳くらいの女の子を連れた初老の男を良く見かけます。

どこがおかしいかといいますと 彼 水銀灯の鉛色の真下 背中を剥き出しにして 『打つのです! 打つのです!』と 女の子に鞭打ってくれるよう 催しているのです。

女の子の持ってる鞭は 皮製とかそんなものではなく棘線のスゴイヤツで あんなんで叩かれたら肉爆ぜ血散る とても痛いだろうなあ。

女の子 彼に催されて仕方なく 嫌々ながら でもやむを得ず ビュンと振りかぶってビシリ!

彼 『あぉおおああ゛あぁぁああ゛!』 だなんて悶絶しつつ地べたを転がり 女の子はその様子を ようやく渇が癒えたかのような安堵の微笑みをば浮かべつつ見ているのです。

ああ 世の中には いろんな性癖の人がいるのだなあ などと 僕は遠目に眺めるだけで。

それでも 僕 散歩の度に 何度か彼と彼女に行き会って いくらか顔も見知り すれ違いざまにちょっと会釈できるようになったころのこと。

夜の散歩 神社の境内に差し掛かると 水銀灯の真下 彼と女の子がいて ああ またやってるなあ。

また彼 背中を剥き出したまま地べたに横たわり 傍らに女の子 オロオロ立っていて。

ありゃ? 今日はなんか 様子がおかしいなあ と 彼と女の子の様子を眺めていると 僕に気付いた女の子 慌てた様子で僕のほうに走ってきて グイグイ袖を引っ張るのです な どうしたんですか?

引っ張られて連れてこられた彼の傍 横たわる彼の顔 苦痛に歪んで 藁半紙みたいに白茶けシワシワ 冷や汗まみれて生きも絶え絶え 一目見て尋常な様子じゃあ ない

うわ きゅ 救急車を! と 右往左往しかけた僕の足首 彼 急にガッシリと握り掴み うわああ!

「いや それには及ばないよ 大丈夫 ちょっと 気が遠くなっただけさね」

彼 よろけつつ立ちあがり 服の土埃を払って近くのベンチに腰掛けて。

気が遠くなっただけ って そんな程度の具合には まるで見えませんでしたが

「ふふン そろそろ 限界が近いンだろうよ 僕の絶対死は 近い」

だなんてうそぶいて ぐったり目を閉じました やっぱり 相当につらい様子。 

そんなに具合が悪いのなら なんで 女の子に鞭打たれているんです? ももももし それが何らかのプレイで 少女に鞭打たれるのがそんなにイイモノならば僕にも是非! いいえ なんでもありませんなんでもありませんけれども!

「いやあ 別にイイモノじゃないよ 見てのとおり とても とても 痛い 苦しい つらい」

んじゃあ なんでそんな事を?

「ふン いい機会だから聞いてもらおうか。 彼女はね こんなふうに痛みをば別けて移して和らげてやらないと 痛みが酷くて眠れないからさね」

え 彼女が痛がってる とか 別けるとか移すとか なんのことです?

「彼女は 不快な痛みに全身を苛まれている 絶え間なくね。 アレだ 紙で指先切ったことあるだろ あんな厭な感じの痛みが強いやつ」

へえ 病気か何かですか

「原因不明 唯一無二にして不治の奇病 さらにはいずれ 死に至る病。 本当ならば彼女は既に死ンでいるはずだけれども 僕と彼女が叶えてもらった願い事のおかげで彼女は生き続けている。 おもえば病で死ンでだほうがマシだったのかもしれないが」

叶えてもらった願い事?

「うん 僕と彼女は 悪魔みたいなものに 願いを三つ 叶えてもらったんだ」

悪魔みたいなものと? 願いを三つ? って 何かの御伽噺ですか

「御伽噺じゃない 本当の話さね。 ずっと昔 彼女が今より背が高くて 人生の謳歌真っ只中 20代半ばに発病した。 あっという間に彼女 痩せて曝えて衰えて 余命一年。 あと一つ年をとったら 彼女 死ンでしまう。 そして 当然のように彼女は死にたくなかった まだやりたいことがたくさんあった 生き長らえたかった だからアレに願いをかけた。 《もうこれ以上病が進まないよう もう年をとらないよう 身体の時間を止めてください》 ってね。 これが一つ目の願い」

彼 右手の指を一つ折り。

「この願いが叶って 彼女はその姿のまま 年をとらなくなった 病は治りもせず進みもせず その痩せさらばえた姿のまま 止まってしまった。 何をしても元通りにはならなかった。 そして彼女の恋人である僕は 彼女が病で醜くやつれてしまった姿がイヤだった 生き長らえたとしても醜いままであるのがイヤだった 僕のちょっとした性癖も含め 彼女に若く美しくいて欲しかった だからアレに願いを掛けた 《彼女の姿を 彼女が10歳だった頃の姿に変えてくれ》 これが第二の願い。 今から20年前のことだよ」

に 20年前?

「ああ 本当ならば彼女 僕と同じ年齢だ あれから彼女の見た目はあの時から変わらない 年を取らない。 嘘みたいだけれど本当の話だよ」

いや 嘘でしょうよ そんな話 とても信じられない。 例えその話が本当だとしてもアレだ 願い事を叶えてくれるってのが本当なら もっと 頭のいい使い方があったでしょう?

「頭のいい使い方って なんだね」

だって 今の話だと 彼女の病気は進行が止まったけれども彼女の身体はまだ痛みが凄くて なのに二つ目の願いで 彼女の病を治しもせず 姿だけを変えてもらった。 なんで治してあげなかったんです? それに 姿だけを変えてもらうんじゃあなくて 彼女の年齢を10歳頃まで巻き戻したら良かったじゃないですか そしたら彼女 発病前にもどるでしょうし それを姿だけ10歳にだなんて 中途半端なことを。

「ふン。 アレとの契約には ルールがある。 <契約者が善意で叶えようとする願いは不可> つまり 世界が平和でありますように とか  彼女の病気を治して良くしてください って願いは ダメだ。 次に <先に叶えた願いの効果を打ち消すような願いは不可> だから 第一の願いの時点で固定された彼女の時間を 10歳の頃まで巻き戻す とかの願いはダメだった だから 姿だけを変えた まあ あといろいろ 口にするのもおぞましいルールが多々あるンだけれどね そんなのはもう どうでもいい 結果として 彼女は 病で死ぬことはないし 僕好みの10歳の姿をずっとしているンだから」

ふむ 恋人がずっと 10歳の若い姿っていうのは すごく うらやましい いや なんでもありません。 ところでですよ 今の話じゃ なんであなたが鞭打たれてるか わかんないですよ

「ああ そうだねえ。 彼女の一つ目の願い 《身体の時間を止めてください》で 彼女の病の進行は止まった。 病で死ぬことはなくなった けれども 病が治ったわけじゃない 厭な痛みは延々と持続し続き続ける」

そりゃ イヤでしょうね

「彼女の痛みは一時も癒えて消えることなく 時間を固定された彼女の身体 厭な痛みは留まり積もり重なり複なって幾倍もの激痛となり 全身隈なく すみずみに至った。 死ぬことが出来ない分 病にかかってたときよりもタチが悪い。 彼女の痛みを止めるように願いを掛けたかったが それはルール上出来なかった。 痛みを止めることは出来ない だから 三つ目 《痛みを肩代わりできる方法》を願った そしたら この鞭をくれた」

それがあの ごつい鞭ですか

「彼女が この鞭で打つことで 彼女は彼女の積もり積もった激痛をそっくりそのまま 別けて与えて移すことが出来る 僕が 彼女の痛みを肩代わりすることが出来るンだ」

大変ですねえ

「さて モノは相談だが」

え なんです?

「僕が死ンだ後 彼女をお願いできるかなあ」

なんですか 唐突に し 死ぬだなんて

「死ぬンだよ 云っただろう 僕の絶対死は近いって。 彼女の痛みを引きうけるってことは とンでもなく命をすり減らすンだよ 鞭打たれるたびに僕は死に近づく だから彼女は僕を鞭打ちたがらないけれど 我慢すれば我慢するだけ痛みが溜まって 我慢できなくなったとき漸く僕を鞭打つ その溜まった分 より苛烈な痛みが僕に来る 持ってあと一 二回 そろそろ 僕の身体はダメになるだろう そして アレとの契約により 僕は惨たらしく死ンでしまうだろう だから その後は君にお願いするよ」

お お願いって 何をすればいいんです

「日に一度 彼女に鞭打たれてくれればいい 君くらいの若さなら あと15年は大丈夫だろう」

そんな 痛いのはいやですよ

「僕の話を聞いたのも何かの縁じゃあ ないか お願いするよ。 鞭打たれるのがイヤというなら 彼女を楽にしてやってくれたまえ」

楽って どういうことですよ

「わかるだろう 殺してくれってことさ 僕が死ンでいなくなった後 彼女が痛み狂うのは あまりにしのびない」

そんな 殺してくれ だなんて

「出来たら でいいよ。 さて もう夜も遅いから帰ることにするよ」

え まだ話が途中なんじゃないですか その 願い事を叶えてくれる悪魔みたいなモノのこととか 教えてくださいよ

「続きはまた明日にでも。 僕がまだ 生きていたらね」

そう云って彼 フラフラ立ちあがってヨレヨレの歩き方 女の子を連れて居なくなりました。

まったく 変な話だったけれど 作り話にしては芸がない 話半分に聞いといたほうがいいだろうなあ なんて思いつつ 僕も帰宅したのであります。


そんなこんなで次の日の夜 散歩の途中 ブラリ立ち寄った神社の境内。

あの二人は居るかなあ といつもの定位置 水銀灯の下 探してみたけれど姿はなく。

今日はお休みかな? などと独り語ちつつ ベンチに腰掛けて一休み。

腰掛けたら ズルリと尻が滑った

何事? 立ちあがりベンチを見やれば ベロベロの肌色 薄っぺらな 妙な敷物。

なんだいこりゃ 昨日は無かったと思うけれど。 べろんとしたのを広げてみて驚いた キレイな人型 美麗な抜け殻 脱がれた人肌 背中の鞭跡で気が付いた こりゃあ 彼の皮ですよ。

どこにも切れ目一つ 裂け目一つ無い 中身が溶けて皮だけが残ったような そんな 彼の抜け殻な亡き骸。

ああ コレが昨晩 彼の云っていた惨たらしい死に様なんでしょう。

彼 彼女の鞭打ちに耐えること出来なくて息絶えることとなった 彼は彼女に殺されてしまった。

それはそうと 彼を殺してしまった彼女 何処に行ったのかなあ と キョロリ見渡しても 彼女の姿は無く。

きっと 何処かへ逃げてしまったんでしょう 楽にしてあげたかったんだけれど 彼女 まだ楽になりたくないらしい 辛くても生きつづけることにしたんだろうなあ。

せっかく 楽にしてあげようと携ってきた出刃包丁 研ぎに研いでギラリとぬめる 彼女の繊弱な首筋に 刺しこんであげようとあげようと思ったのに 残念だなあ。


それから暫くしてです 黄昏時の夕間暮れ ひとけのない通りを歩いていると いきなり背後から何者かによって鞭打たれる 突如全身を襲う激痛に身動きできないでいるところから財布を奪われる という通り魔的強盗事件が多発しているのでありますが どうやら彼女は彼女なりに たくましく生きているようでありますよ。
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