だいだら。

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2006-03-19

「この町の平和は 私が護っている」

という彼は 今日も建物の隙間から あの山の向こうを凝視。

町のみんなは彼のことを笑うのだけれど この町は至って平和 今年も人死に事故の一件もおきなかった。

「私が監視していなかったならば 何百人もの被害がでているだろう」

と 今日も彼は 三角の目をして あの山の向こう 一点を凝視。

監視っつっても ただ 山の向こうをじっと見ているだけだろうに。 町の平和を護っているってんなら もっと町の中のことも見なきゃいけないんじゃないのかね ほら あそこに チンピラに絡まれている若い男がいるだろう きっとカツアゲだろうねえ 護ってあげなくてもいいのかい?

「あんなの どうってことない。 私は 町を護るのに忙しいのだ」

だなんて云って カツアゲされてる男のことなんてソッポを向いて ただただ山の向こうを凝視。

日が昇ると同時に 彼は外に出て 建物の隙間から山の向こうを凝視。

時々 場所を移動して建物の隙間から隙間へ 移動するときは全速力でダッシュ 次のポイントについては山の向こうを確認して 「よし」 だなんて云って。 なにが よし なのか全然わからないよ。

彼があの山の向こうを見ている間は 食べるものも食べず 瞬きの一つすら惜しむように 目を見開いて 血走った目をしているものだから 町の人はみんな 彼の頭がおかしいものだと合点して。

日が暮れて真っ暗とばりが降りた頃 彼は深いため息一つ吐き 安堵した表情浮かべてあばら家に戻る生活 かれこれ10年繰り返し 一日の休むこともなく。

「この町の平和は 私が護る」

町のみんなは彼のことを笑うのだけれど この町は至って平和 この10年間 人死にの出るような事故は一件も起きなかった。


けれども 監視を休むことなく続けてきた彼の身体にガタが来て 一ヶ月ほど入院したらばですよ 起きるは起きるは 交通事故 火事 家屋倒壊 さまざまな類の人死にの数 10年分の人死にを取り戻すくらいの勢いで 立て続けに。

その数ざっと一千人。 この小さな町で 一月の間に 異常な数の人死にで あくまで原因不明 究明の仕様がない人死に連鎖。

この連鎖がピタリと止まったのは 彼が退院して また山の向こうの監視を始めたとき。

病み上がりの彼の顔は ビックリするくらい白くて眼窩も落ち窪み 髑髏みたいな様子だったけれども 相変わらず山の向こうを凝視する目はギラギラ光って三角で。

入院中 この町の人死に連鎖のことを聞いていたのでしょう 彼は。

「すまない 私が不甲斐ないばかりに こんなことになってしまって。 だが もう大丈夫 私が この町の平和を護る」

その言葉の通り 人死に連鎖はピタリと止まり また町は平和。

町のみんなは かつて彼のことを笑っていたけれども 今はただただ薄気味悪いものを見るような視線を送るばかり。

「私に見えるものが 皆に見えるのなら 皆 私と同じことをするだろうさ」

と 彼は云いました。

「あの山の向こうを見てみろよ 何にも見えないか? 見えないか。 私には見えるんだよ 青い男が」

青い 男?

「空色の男だよ ソイツが 山の向こうから この町を見ている。 日が昇ると 山のむこうっからヒョイと顔を出す 山の頂に手をかける 立ち上がる 山を跨いで こっちに向かってくる 滑るように飛ぶように すごい速さで歩いてくる この町に着くとソイツは 手あたり次第にモノを壊す 子供が遊ぶみたいに 自動車をミニカー扱いで好き勝手に遊びまわって 遊び飽きるか 日が暮れたら また山の向こうに帰っていく。 この町の人死には 全部ソイツ 青い男の仕業なんだよ」

じゃあ この間の人死に連鎖は 全部 青い男が?

「ああ 私が10年間 アイツを監視していたから できなかった鬱憤を10年分晴らしたってことだろうよ だか もう そんなことはさせない 私がアイツを 見ているからな」

見ている?

「アイツは 見られると 動けない。 達磨さんが転んだ みたいなもんだよ。 ただ アイツは ちょっとよそ見した隙や 瞬きした隙に すごい速さで近づいてくる いつだってギリギリなんだよ 日が暮れるちょいと前には 町のすぐ手前まで来ている」




「いずれ 限界がくるんだ 私の目は老衰に疲れ 日々の不養生で霞み 瞼は重く 日の光に眩む いずれ それも極近いうちに 私の目は 何も見えなくなるだろうよ こないだ入院したときに そう医者に云われたよ。 私と同じように あの山の向こうのアイツを見ることができる そんな人間が出てこない限り もうお終いなんだ」

もう お終いなんだ ともう一度云い 彼は山の向こうを凝視し続けた。
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Comment

名状しがたきもの : 2006-03-20(Mon) 07:38 URL edit
ロマンチックですね。この話好きです。
hoicho : 2006-03-23(Thu) 23:13 URL edit
素敵です
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