実在するモノは存在するモノの内の一握りに過ぎないということ。

Home > ----- / スポンサー広告 > This Entry 2009-09 / 未分類 > This Entry [com : 11][Tb : 0]

--------

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2009-09-27

 久冨さんは 僕の近所の橋の下にテントを張って棲んでいる 自称流浪人で僕の知人であります。

 日がな一日ギターをボロロンボロロン爪弾いたり 乾燥雑草を紙巻いた自家製煙草を燻らせたりと 傍から見たら気ままに過ごしていて ああ なんだかうらやましいなあ。

 けれども 今年の春先から橋の下のテントを畳んで何処かへ行ってしまい もう戻ってこないのかなあ どこかで野垂れ死んでしまったのかなあ まあ 久冨さんのことだから 自由気ままに好き勝手に生きて死ぬのは望むところなのでしょうよ。

 などと思っていたところ 僕んちを訪ねてきたのは久冨さんでありまして。 おや 珍しい 久冨さんの方から僕を訪ねてきてくれるなんて。

「いや ちょいとばかり ね アレな用があって 何せ アレがアレだから」

 どうしたんですか歯切れの悪い。 そういやあ 今の今まで何処にいかれてたんです?

「まあ その話も含めてお土産にしようじゃないか 上がってもいいかい?」

 ああ どうぞどうぞ。 それにしても 随分と長いこと出かけてたんじゃないですか

「うん 思ってた以上に 長くて遠い旅行だったね。 んで これがお土産だ」

 久冨さん 懐から取り出したるは 小瓶に入った白い砂状 と 同じく小瓶入りの ドロリと黄色く濁った液体。 なんですか コレ?

「今回出掛けた先で採取した星砂と 俺自家製の蜂蜜酒だよ どっちも貴重なものだよ」

 星砂と蜂蜜酒? あ ありがとうございます この二つにどんな関連があるのか判りませんけれども。

「今回出掛けた先は とある伝説付きの海辺の町だよ」

 伝説付き?

「うん。 その町の海辺は昔 『鱶人』っていうのがウジャウジャいて 漁具を壊して漁業を脅かしたり 女人を拐かして孕ませたり 人を殺したり という悪行三昧を働いていたんだ が あるとき どこからか現れた高僧が 三日三晩の祈祷の末 鱶人を沖の暗礁に封じたそうだ。 高僧は 浜を魔除の星砂で満たし 『この白い浜辺が黒く塗り潰されない限り 海の者の封印は解けないだろう』と言を遺して去っていったそうだ。 後に 鱶人に通じた悪しきモノや 鱶人の血の混じったモノが 白い浜辺を黒く塗り潰して鱶人を解き放とうと 墨を撒いたりしたけれど その度波に洗われて 白い砂浜は黒く染まることはなく 鱶人はそれからずっと 今まで封印されたままだったとさ めでたしめでたし」

 へえ。 鱶人の鱶ってのはアレですか フカのことですよね サメと同義の。 ソレの人ってことは 小泉八雲の話に出てきた鮫人みたいなやつですか 半魚人みたいで涙が真珠だか紅玉になるってヤツ。

「いや 全然違うと思う。 鱶人ってのは 半魚人というよりは もっと 両生類的な感じだよ ヌメヌメしてて 見るのも忌まわしい。 サメとかフカの要素は見当たらないなあ」

 え じゃあ なんで鱶人っていうんです?

「さあ? あー でも もしかしたら 元々 鱶は関係なかったかもしれない。 フカって発音に後付で鱶の字が当てられたのかもしれないね 深いところにいるモノ 深いところから来るモノ 転じて フカビト 鱶人 なのかもしれないなあ」

 まあ どうでもいい話です。 んじゃあ この小瓶入りの砂が その鱶人を封じてる砂浜の星砂ってことですか

「ああ 最早 貴重なものだから これからの佐々木(仮名)君に必要になるものだから 大事にするといい」
 
 え なんのことです。 ところで この星砂 なんか星の形をしてませんね 星砂ってのは もっとこう 棘棘が飛び出てるんじゃないんですか? キングキタンっぽい感じじゃないんですか?

「コレは そういう意味での星砂じゃあないのだよ。 形が星型ってわけじゃあないのだよ。 砂の一粒一粒を よく見てみるのだ」

 や 小さくてよく見えませんが なんか 変な模様っぽいのが見えます

「うん 目を真ん中に囲む五芒星 みたいな模様が刻まれているんだ だから星砂。 この一粒一粒に 同じ模様が刻まれている 凄いだろう」

 凄いですね じゃあ 浜一面の砂 全部に この模様が刻まれてるってことですか なんという自然の神秘。

「ある意味 神の御業だね。 まあ 残念なことに あんなにあった星砂も 此処にあるだけで最後になってしまったんだけれども」

 え 砂浜一杯にあったんじゃないんですか?

「こないだ タンカーの座礁事故があっただろ」

 ああ なんか原油がダダ洩れて大変らしいですね 砂浜に漂着した真っ黒油で 浜一面ベトベト真っ黒になってたのをテレビのニュースか何かで見ましたよ

「其処なんだ 星砂の浜は。 ベットリ染み付いた油で 白い浜は黒く塗り潰されてしまったんだよ」

 塗り潰されたって んじゃあ

「鱶人が解き放たれたってことさね。 密かに 静かに 秘して隠れて けれども確実に甦った」

 や まさか。 そんなのただの 言い伝え 伝説 昔話でしょう? 非実在のモノでしょう? 現実的じゃないです そんな鱶人なんて化物。

「信じようと信じまいと どっちでもいいさ いずれ 解る。 さて そろそろ時間がないなあ」

 時間? 何処かにいく用事でも

「うん。 鱶人から逃げなくてはいけない 隠れなければいけない。 俺 鱶人をもう一度封じる方法を探していたのを 鱶人に感づかれた。 だから 一旦鱶人の手の出せないところに逃げる。 そこで 次の手を考える。 ってことで佐々木(仮名)君 暫しのお別れだ。 この話を聞いてしまった佐々木(仮名)君も 鱶人に狙われるかもしれないが この星砂を肌身離さず持っていれば 暫くは大丈夫だろう。 が 大丈夫じゃなくなったら この蜂蜜酒を飲んで 俺と同じように逃げるがいい」

 そういいながら久冨さん 懐から小瓶を取り出して中の液体をグイと飲み干し ガラリと部屋の窓開けて。 ポケット 石で出来た笛 取り出し奏で 空に向かって 聞き取り不能意味不明瞭な叫び声。

「然らば おさらば 縁があったら またいずれ」

 くるり振り返った久冨さん ニッコリ笑って一礼 僕に石笛を放って寄越し 後ろ向きのまま窓の外 ピョコンと飛び降りて。

 僕 急いで窓 身を乗り出して外 上下左右見渡してみたけれど 風に攫われでもしたかの様に久冨さんの姿は消えてなくなっていて それ以来 久冨さんのことを 見ない。
  
スポンサーサイト

Comment

名状しがたきもの : 2009-09-27(Sun) 22:23 URL edit
更新待ってましたー
久冨さん久しぶりです
名状しがたきもの : 2009-09-27(Sun) 23:58 URL edit
久冨さんいろんなことしてるなー
名状しがたきもの : 2009-09-28(Mon) 05:26 URL edit
今回の久冨さんはなんかかっこいい
名状しがたきもの : 2009-09-28(Mon) 07:37 URL edit
これ続くんですか?
  : 2009-09-28(Mon) 15:47 URL edit
待ってました
名状しがたきもの : 2009-09-28(Mon) 22:55 URL edit
久冨さん は ビヤーキー を よんだ!
名状しがたきもの : 2009-09-29(Tue) 17:38 URL edit
どうすんだこれwww
名状しがたきもの : 2009-09-30(Wed) 18:10 URL edit
久富さんシリーズ好きかも
名状しがたきもの : 2009-10-03(Sat) 00:13 URL edit
久冨さんがかっこいい
名状しがたきもの : 2009-10-13(Tue) 19:04 URL edit
こんな久富さんはじめてよっ!
名状しがたきもの : 2009-10-19(Mon) 20:38 URL edit
久富さんがカッコよくなってるwww
Post a Comment









管理者にだけ表示を許可

Trackback

http://puddleglum.blog27.fc2.com/tb.php/219-5996538e

沼人村 Home | Page Top▲

Next door
New>> 苦手。
old>> 夜が奇妙な衣装を着た。
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
このブログをリンクに追加する
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。