2006-01-30
川に住む河童は 雪のちらつく頃になると 冷たい水から上がります。
ヌメヌメの身体が北風に晒されて乾くと 徐々に毛が生え 毛むくじゃらになり。
毛が生えそろうと 河童は山に入り 山童になります。
山童は 冬の間 木の洞などに棲み 枯葉に包まってぬくぬくと過ごします。
河童から山童に移行するときの変化は 身体に毛が生えるだけ ではありません。
冬の間 お世話になる山の神様に失礼にあたらないよう 自分の片目を外すのです。
(山の神様は 片目のため 自分たちもおなじく片目にするのです)
河童 →
山童もちろん 冬が終わって春がきたら また川にもどらなければいけないので 外した目玉は 大切にとっておきます。
流れの穏やかな深い淵 一番底の 光の射さない場所 秘密の壷があるのです。
その壷に 河童の一族郎党全員の片目が 大切に大切に仕舞われているのです。
「で これが その壷だぜー」
と 知人の彼が背負ったリュックから取り出したのは 古びて皹欠けているけれども なんとなく由緒のありそうな壷でして。
つまり その壷の中に 河童の目玉が?
「ああ みてみるか?」
彼 壷を覆う革蓋剥がすと 蛍光灯の明かりをキラキラかえす 透き通った碧色が 壷口間際までみっしり詰まっていて。
「コレを磨き上げると質のいい珠になる。 煎じると万病に効く薬になるし このままの目玉を一つ 焼酎に入れると キュウリを入れて飲んだときと同じ味になる。 もんのすごいお宝なんだぜー この寒い中 冷たい水の中に潜った甲斐があるってもんよー おかげで風邪を引いちまって大変だったぜー」
へえ でも アレじゃないですか 河童の大事な目玉を盗み出して 大丈夫なんですか?
「いやあ 大丈夫じゃないなー でも 冬の間は大丈夫だろ あいつら 山の中に籠もってると思うし 冬の間に全部捌いて 春先には南の島で豪華なバカンスさー。 で どうよ」
どうよ って なんです?
「いくらで買うかって話よー。 俺は 無駄話をしにお前ンとこにきたわけじゃあないんだぜー。 トモダチ価格だ 大まけにまけて目玉一個 12万円でどうよ」
へえ 安いなあ。 10個ほどまとめて買うよ
「ほっほう 気前いいねえ んじゃあ 即金で」
といいたいところだけれども あいにくと今 持ち合わせがない。 すまないが このあたりを一回り 散歩してきてくれないか そうだなあ 30分ほどあったら十分かなあ
「そんくらいなら まあ適当にぶらぶらして時間をつぶしてくらあぜ」
うん いってらっしゃい。
彼 僕の部屋から出て行って ふう ようやく一息つけた。
お金の準備なんか するわけがない 彼を この部屋の中 一刻もいさせるべきじゃない 危なかった。
ああ 彼 風邪を引いたって云ってたっけなあ だから 気付かなかったんだ
彼にベットリ付き纏う 魚みたいな獣みたいな生臭さ。 彼 風邪で鼻が詰まってるからわからなかったんだろうねえ。
僕 二階の部屋の窓 カーテンをちらり捲って覘いた窓の外 ぶらぶらほっつき歩く彼の後姿が遠くに見え。
歩く彼の後ろ 遠巻きに。
犬ほどの大きさ 猿みたいな姿勢で半ば四つん這い 彼との距離を ジリジリ詰める 片目の動物の群れ 彼に纏い付く異臭の根源。
僕 ああ もう 彼と会うことは二度とないなあ と思い。
事実 そのとおりになった。
Comment
こういう話、大好きですw
ああやっぱり佐々木さんだなぁとしみじみ(常連ヅラ)