古守宮。

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2008-09-16

 読書をするのに ある程度の決意が必要になったというのは やはり年齢から来る衰えなのかなあ と しみじみ思います。 ちょいと前までならば 本は買った当日に読み終えて 面白かったら二度三度と読み返すのが当たり前であったのに 近頃なんだか面倒くさい。 面白そうな本を買っても 読むのに躊躇してしまうのです。 後で読もうと積んでしまうのです。 そうこうしている内に積み重なって十数冊 なんという自堕落 情念の衰えを自覚してしまうものです。

 なので 読書以外のことを何もしない日 というのを設けまして 積んだ本を消化するのです。 いやいや 消化するだなんて 読書に対する姿勢がなっていません もっと本に対して真摯な気持ちで向き合うべきなのです。 そう 本を読む時はね 誰にも邪魔されず自由で なんというか救われなきゃあダメなんだ 独りで静かで豊かで

 などと ちょいとウットリ気味に本の表紙を指で撫でているとですよ この幸福な一時を邪魔する輩 誰かが玄関のドアを鈍器でめった殴りにするかのように 騒音めいたノックの雨霰です。

 こんな気違いじみたノックをする人間に一人 心当たりがあります ああ なんで こんな日に来るものか。 何時ものクダラない用件だったら アームロックの一つでも極めて黙らせてやろうか と まだノックの鳴り止まないドアを勢いつけて押し開けましたら ガゴッ と ぶつかり鈍く響く音 やった!

 ウキウキしながらドアを開けると 玄関前 額を押さえて蹲る涙目の 歓迎せざる客は やっぱり 今は離れて暮らしている 僕の双子の兄でございます。

「酷いじゃないか 久しぶりに訪ねてきた兄に向かってこの仕打ち なにか怨みでもあるのか」

 うん 兄さんに心当たりはないのですかな 僕には山ほどあるのですが。 ところで兄さん なんで背中に

「おっと まずは俺の話を聞け。 今は俺の番だ。 俺がお前ん家に寄ったのは他でもない ちょいと俺の連れが疲れたから休みたい と云いだしてなあ んで 金も掛からずゆっくり出来る最寄のところっていえばお前の家を思い出したわけだ という訳で休憩させてくれ」

 やですよ そんな ウチは休憩所じゃないです ソレに今日はゆっくり読書三昧と洒落込むつもりなのですから そんな余裕はありません

「ああ そんなことを云ってもいいのかなあ 俺の連れというのは お前に紹介しようと折角連れてきた 可愛らしいお嬢さんだというのになあ アレだぞ お前が街中で彼女に出会ったら 思わず度を越したセクハラ行為をお見舞いしてポリス沙汰になる位の」

 ああ 兄さん 見損なわないでください そんな 女人の色香に誑かされるような僕ではありませんよ それに僕は街中でセクハラ行為に及ぶなんて事はしません

「ああ 確かに見損なってた お前ほどのド変態なら 警察に捕まるなんてドジは踏まないだろうし セクハラ行為をして女人をおびやかすなんて事しないよな あくまで合法といいくるめて行為に及ぶんだよな お前みたいなヤツを先天性の変態紳士と云うのだなあ」

 よしてくださいよ 僕に関する流言飛語は

「わかった お前が女人の色香に惑わされないヤツだってのは理解した。 だが 疲れて身動き一つ出来ない か弱き少女を 何もせずに見過ごすという冷たいヤツなのかお前は ああ 俺はお前をそんな風に教育した憶えは無いぞ この意気地なしが! 根性なしが!」

 兄さんの話はくどくて仕方がないよ ああ もう面倒だからいいですよ 好きなだけ休んでいくがいいですよ

「おお 物分りが良くて大変結構。 さて 彼女をお前の部屋に迎え入れるのには それなりの準備が必要だろう。 お前ン家に ロクなお持て成しセットがあるとは思えんし。 さあ 早速 彼女を迎えるに相応しい部屋にするため 綺麗な花と ちょっとしたお茶菓子と あれだ 洒落た紅茶 関西地方の祭りみたいなヤツか宇宙人みたいなヤツを買ってくるんだ」

 紅茶って ダージリンとかアールグレイとかですか 買ってくるんですか 僕が? 僕の金で? 兄さんは一銭も払わずに?

「当たり前だ 俺を誰だと思っている 無茶で無謀で無職の無一文だぞ」

 その肩書きに 無能と無礼と無駄飯喰らい その他『無』で始まるマイナス方面のあらゆる言葉を足しておくがいいです
 
「さあ 無駄口はいいから 早く買ってくるんだ 彼女はもう 疲れ切っているんだぞ」

 ああ わかりましたよ コンチクショウめ。 僕 呪詛をブツブツ口中で紡ぎつつ 近所のスーパーで 紅茶とミルフィーユと花を一輪 お買い物。 さあ 望み通りの物を買ってきましたよ この借りは万倍返ししてもらいますよ と 玄関 ドア開けましたら たたきのとこに 見慣れぬ靴。 見るからにこちらの被虐的感覚を刺激しそうな エナメル ピンヒールの綺麗なパンプスで ああ コレはいいものです この不安定極まりない靴を年端も行かない少女に履かせて おぼつかない足取りでヨロヨロ歩くのを見たい もしくは踏まれたい 更には この靴の中に月経の血を満たして 指で掬って詩集の挿絵をなぞるのにお誂え向きな いいえ なんでもありません。 これは あの 兄さんのお連れさんの靴ってことなのかねえ だとしたら 実に良い。

 などと独り語ちつつ 部屋に入りますれば わあ 何てことしてくれるんですか 僕の秘蔵のお酒を

「なんてこと? ああ この酒瓶のことか。 お前アレか この家には花を生ける花瓶もないのか 探しても見当たらないから なんか奥の方に隠してある風のブランデーの瓶が一輪挿しに丁度よさげだから 中身を流しに捨てて代用させてもらったのだ」

 ぶっ殺しますよ 兄さん 幾らしたと思ってるんです その酒

「毎日酒びたりの爛れた生活からお前を脱却させてやろうという兄の真心が分からぬのか! さあ その花をよこせ まだ飾りつけの最中なのだ」

 う え あ はい  くッ…… いつか兄さんは地獄に落ちますね

「ははは 面白いことを云うなあ お前は」

 別に面白くはないです。 ところで 兄さんのお連れさんも ゆっくり休んでもらってはどうです? 兄さんもいい加減疲れてるでしょうし

「うん? 何のことかわからんが まあいい。 よし コレで飾りつけはよし と。 さあ お持て成しするんだ。 とりあえず そこの 俺がセッティングしたテーブルに お茶と菓子を乗っけるべし」

 僕の部屋のテーブルに 何処から出したのか知れない真っ白なクロスが掛かっていまして その上に 酒瓶に生けられた花一輪 それに写真立て 一枚の古びた写真 写真? 兄さん なんすか この写真

「ああ 可愛い女の子だろう 品があってお澄まししてて 誰よりも優しいけれども感情を素直に出すのが苦手で 人に弱味をみせないように自分の殻に閉じこもりがちだったけれども いきなりその殻をぶち破るようなことをしたアイツ 出会いのキッカケは最悪だったけれど何度か話すうちにアイツの中の良いところにも気付いて アイツも不器用な性格の自分を励ましてくれるのは嬉しいんだけれどもそんな性格が災いして辛く当たっちゃって そんな自分はアイツに愛想をつかされても仕方ないのに それでもアイツは自分を見守っていてくれて そんなアイツのことを好きな自分に気が付いて いつしかアイツにべったり依存してしまうようになって こんなんじゃいけないと思うんだけれど依存する自分の立場がなんだか心地よくって そんなのに心地よさを覚えてしまう自分に苛立ってしまう 自分を嫌いに思う自分が嫌いになってしまって駄目になりそうになるけれども 心の中の通った筋は絶対に曲げないような 強い女の子…… そんな感じだろう?」

 長いよ。 まあ 可愛いのは確かですね CV釘宮理恵っぽい感じの。 ふむ こんな表情もできるんですね

「ふふん この写真が『彼女』の姿だ」

『彼女』の姿? なんのことです? 『彼女』を写した写真ってことですか? にしては ずいぶんと古い写真ですねえ 彼女の年齢と 合わない

「ああ 彼女は年をとらないからな 更には 実在しないからな」

 は? 兄さん 何を云ってるのか理解できないです

「実在はしないが存在はしている。 なんと云えばいいのか言葉が足りないが アレだ 彼女は 形而上学的な存在なのだよ」

 いや 兄さん 本格的に狂いましたか?

「あーあーあーあー これだから血の巡りの悪い馬鹿は嫌いだよ。 ようし 俺が低能なお前にも分かりやすいように話してやろう。 お前は 家を新築して棟上をするときの儀式について知ってるか?」

 ええっと 棟上式ですか? 建前とかいうのと同じですよね 餅とか小銭を撒くヤツですよね。 なんか 家の骨組みが出来上がって 棟木を上げるときに 大工の棟梁が米とか塩とか酒とか備えてお祈りして んでお札とか御幣とかを棟束に縛りとめる っていう感じのヤツ だった気がします。

「うむ 概ねそんなものだろう。 その棟上のときに お札と一緒に 草鞋を供えて縛りとめる という風習があるところがあってな。 その草鞋の鼻緒は儀式のときに切られている。 何故か分かるか?」

 鼻緒が切れてる草鞋ってことは 履けない草鞋ってことでしょう? そんなのを何で供えるんですか

「いや。 履けない草鞋を供えるんじゃない。 履ける草鞋の鼻緒を切って履けなくして供えるんだ」

 同じことじゃないんですか?

「違う。 この草鞋ってのは 神様の履物なのだ。 棟上式ってのは土地の神様を招きいれて 家の守り神として祀り上げる儀式だ。 『ここにあなた専用の草鞋を用意しました だからコレを履いて来て下さい』で神様を上げたあとに 草鞋の鼻緒を切る すると神様は外に出ようにも履物がないから外に出れない 家に縛られる って訳だ」

 へえ なるほど。 んで それとこれとは どんな繋がりが

「昔 これで一寸したことを試した人がいてな まあ この家の神様が 可愛い女の子だったらなあ なんて夢想を実現させるべく ある方法を試したのだ。 彼は 家を新築するとき ある儀式を行った。 草履の変わりに 彼は ピンヒールのパンプスを用意したのだ」

 その人も兄さんと同じくらい おかしいです

「土地の神様を家の神様として迎え入れた後 彼は靴の片一方 ヒールを折って 神様が出て行けないようにした。 その時には『あーあ まったく背伸びして そんな靴履くから ヒールを折っちゃうんだぜ?』的な小芝居を交えつつな。 勿論脳内では『べっ別に背伸びなんかしてないんだから!アンタの家にくるのに オシャレしてたわけじゃないんだからね!』と赤面してる女の子をイメージしつつな。 そして彼は 家の神様の為に 部屋を用意した。 そこには 彼が夢想して止まない『女の子の部屋』で 縫いぐるみやらファンシーな家具が置かれ 鏡台の上には 彼のイメージに合致する一人の少女の写真が置かれ 彼はこの写真の少女のイメージを神様に投影した。 そして 毎日 この部屋に花を飾り 紅茶とケーキを供え ご相伴し 神様に語りかけ続けた。 それは 彼が老人になる40年以上の間 続けられた」

 兄さん以上に おかしいです

「ああ 傍から見れば おかしい人だろうさ けれども 継続は力なり ともいう。 神様はいると思い続ければ その人には見えるようになる。 そして神様は見るものによって姿を変える 可憐な少女としてイメージされたから その姿になった。 ちょっとばかり偏った性格の女の子として話しかけられ続けたから そんな性格になった。 そして長い間『在る』こととして接してきたから そこに『居る』ことになって 彼以外の人間にも見えるようになった。 それが 彼女のことだよ まあ 見える人間は限られているけれども」

 兄さんには 見えたんですか?

「ああ 見えたよ。 今は何でか見れないけれども 居るのは分かる 俺の傍にいるのは分かるんだ」

 んじゃあですよ なんで その男の人が姿形を与えた家の神様であるところの彼女が 兄さんなんかと一緒にいるんです?

「まあ 最初は偶然だったんだよ 例によって俺が 先月から諸国漫遊の旅に出ていたとき 腹が減っていた俺を親切にも助けてくれたのが その老人なのだよ」

 兄さんが施設を脱走してウロウロしてたところを保護してくれた人 ってことですね

「彼が俺を家に連れて行ってくれたとき 俺にも彼女が見えたわけだ。 んで彼から彼女のことを聞いて 彼女が家の神様だってことを聞いて すごく羨ましくなってなあ。 俺のそんな気持ちが知らず知らずのうちに顔に出ていたんだろう 彼が 彼女を俺に譲ってくれるというのだ。 なんでも 自分はもう年で 老い先短いから 彼女のことを誰かに託したい 彼女のことが見える というのも何かの縁だから ってことで 俺は彼女を譲ってもらったわけだ」

 本当に 譲ってもらったんですか?

「ああ 本当だとも。 彼女を家から連れ出す為の 新しい靴を用意して 彼女を連れてきたんだ。 後は俺が家に戻り そこで靴のヒールを折って 彼女を家の神様にして そしたら今は見えない彼女の姿もまた見えるようになって そして俺の寿命が尽きるまで 二人ぼっちで暮らしていくのだ」

 いや そうじゃなくて 兄さんは 彼から 本当に譲ってもらったんですか? 本当は 奪い取ってきたんじゃないんですか? もしかしたら 彼女を強引に奪う為 彼を 犯罪的行為で黙らせてきたんじゃないんですか?

「ばッ 馬鹿なことをいうんじゃ ないよ 冗談も程々にしておけよ は ははは」

 だって そうでなきゃ 彼女 写真みたいな綺麗な顔をしているはずでしょう?

「あ? 何を云っているのだお前は」

 兄さん 彼女の姿が見えなくなったっていってるけれど 見えないわけですよ 彼女 兄さんの後ろにいるんだから 見えるわけがない。 兄さんの背中にぴったり張り付いているんだから 見えるわけがない。 彼から平和的に譲ってもらったってンなら そんな険しい顔をしているわけがない 彼と仲良く暮らしていた彼女が 平和的に彼から兄さんに譲渡されたってんなら なんで彼女 鬼みたいな顔して 兄さんの背中に張り付いて 兄さんの首を 絞めつけているんです?
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Comment

名状しがたきもの : 2008-09-16(Tue) 22:32 URL edit
コワイ
名状しがたきもの : 2008-09-16(Tue) 23:59 URL edit
双子のお兄さんお久しぶりです。
名状しがたきもの : 2008-09-17(Wed) 09:03 URL edit
草履の風習がある地方は草履の似合う女の子の神様でいっぱいですね分かります
名状しがたきもの : 2008-09-18(Thu) 17:00 URL edit
>>関西地方の祭りみたいなヤツか宇宙人みたいなヤツ

こういうところ、大好きです。
  : 2008-09-19(Fri) 18:03 URL edit
いつもよく読むと弟も相当な変態なのがたまらないです
名状しがたきもの : 2008-09-24(Wed) 12:21 URL edit
少女=釘宮理恵に衝撃を受けた…
もう誰も信じない
みおのすけ : 2008-09-25(Thu) 14:23 URL edit
弟君にも見えてたんですね
くぎゅうが
名状しがたきもの : 2008-09-26(Fri) 23:56 URL edit
>ぶっ殺しますよ 兄さん

いい加減弟さんに惚れそうです。
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