『じゃあ次は僕の番だね』と彼女は云って蝋燭の前。

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2007-04-15

「鬼ごっこの時にお面を被ってると 死人が寄ってくるって云うね」

と 狐面の彼女は 蝋燭の灯りにゆらゆら照らされつつ 話し始めました。

「神社の境内で子供たちが鬼ごっこをしていたんだ。 んで 偶々だったんだろうね 誰かが鬼のお面を持っていて んじゃあ鬼になった子は その鬼の面を被ることにしようってことになってね。

 そのルールで鬼ごっこを始めたら 妙に面白い。 鬼がお面を被ると被らないとじゃあ そんなに変わりはないと思うんだけれども どうした訳か いつもに比べると格段に面白い。 みんな楽しくなっちゃって 時間が経つのも忘れて遊び続けた。 そして いつしか夕間暮れ。 影法師も長く伸びて 朱色と黒色の二色に世界が染められたとき。 子供たちの誰かが気付いてしまうんだよ。

 今 鬼から逃げてる子供たちは みんな知ってる顔だ 知ってる顔しかいない 知ってる顔は全員だ 今まで遊んでいた 知ってる全員が 鬼から逃げている。

 じゃあ みんなを追いかけている 鬼の面を被っているアレは誰? ってね。

 逃げてる間に その子は隣を駆けてる子に 誰か知らない子が交じってたっけ? って確認したけれども 今日はそんな子 仲間に入れた憶えはない。 あの鬼の面を被った知らない子は いつの間に交じっていたんだろう 誰にも気付かれないように 仲間に交じったあの子は あの鬼の面を被ったアレは はたして普通の子供であろうか いやさ もしかして 本物の鬼なんじゃないか アレに捕まったら どこか知らないところへ連れて行かれてしまうんじゃないだろうか。

 なんてことを その鬼から逃げてる間 みんなに話してたら 本当に あの鬼の面を被ってる子が本物の鬼に思えてきて 今までキャッキャキャッキャ楽しそうに鬼から逃げてた子 みんな 恐怖に歪んだ泣き顔で 本気で鬼から逃げている。 鬼につかまったら 何をされるか分かったモンじゃないからね。

 もう みんな鬼ごっこどころじゃなくなって そのまま鬼から逃げるように テンでバラバラに各家に逃げ帰ったわけさ。 結局 その鬼の面を被った子が誰なのかはわからなかったんだけれど 僕は その鬼の面を被った子は 本物の鬼だったと思うよ」


ふうん で 今ので話は終わりかい? じゃあ 君 蝋燭を吹き消しなよ。 次は僕が取って置きの怖い話を…


「いや まだ 話には続きがあるのだよ。 まあ これは僕の付け足し的な どうでもいい話なのかもしれないけれど まあ聞いてくれたまえ。

 『ごっこ遊び』っていうのはねえ 云ってみれば本物の真似事 喩え事 擬え事 偽物 紛い物 だ。 本当のことでないからこそ 本物に近づければ近づけるほど面白い遊びになる。 が 『ごっこ遊び』が何かの拍子で 本当になってしまったら それはもう遊びでは済まされない。 ごっこ遊びがごっこであるためには 本物の交じる余地を残しておいてはいけないのだよ。 『ごっこ』が本物にならないための一線 ってのが どんな『ごっこ』にもある。 チャンバラごっこでは真剣を使っちゃいけないし お医者さんごっこで本当の薬をつかってはいけない。 んじゃあ鬼ごっこが『ごっこ』であるための一線ってのは何だと思う? それはねえ 鬼の役が 誰なのかを 知っていることだよ。 さっきの話の場合だとね 鬼の役がお面を被ることで 鬼の役が誰であるのか判らなくなる ここに 本物が交じる余地が生まれるわけだよ」

へえ そうなのかい あ もう終わりかね じゃあ 僕のトッテオキの怖い話の番だね

「君たちもそうだよ こんな『百物語ごっこ』を楽しんでるつもりでも 『ごっこ』が『ごっこ』じゃなくなってしまったら どうするつもりだい? こんな 怪談を語るものは雰囲気を出すために持ち寄ったお面を被って語るなんて趣向 君が考え付いたのかね ああ やめておいたほうがよかったのに。 本物が交じる余地を残しておくから ほら 怪異が寄ってきた」

そう云って 狐面の彼女 被ってた狐面をクィと上にずらし 真っ赤な唇だけを覗かせて にっこり微笑んだ。 

そういやあ 今夜の集まりの中に こんな女の人 いたっけかなあ 人数も 教えてもらってた人数よりも いつの間にか一人多い 気がする もし本当に一人増えてたら怖いので 人数を数えるのはやめておくけれど。

「話し終わったら 蝋燭を吹き消すんだよね くっくっ」

彼女 咽の奥で奇妙な笑い声を立てると 彼女の目の前の蝋燭を ふッ   と消した。

途端 今夜の参加者の目の前に立てられた蝋燭 まだ怪談を語っていない者の前に灯された蝋燭 全てが一斉に消えて 真っ暗になる。


そして この場にいた者 全ての意識が溶暗する。
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Comment

名状しがたきもの : 2007-04-15(Sun) 21:38 URL edit
僕…!
名状しがたきもの : 2007-04-15(Sun) 22:31 URL edit
そこに反応か!
いや自分もしたけど。
いいよね、「僕」。
名状しがたきもの : 2007-04-16(Mon) 00:00 URL edit
僕っ娘のサキュバス…!
名状しがたきもの : 2007-04-16(Mon) 01:59 URL edit
お、おもしろい。ここしばらくの中で一番良かった
名状しがたきもの : 2007-04-16(Mon) 17:50 URL edit
僕っ娘か…!
名状しがたきもの : 2007-04-16(Mon) 18:50 URL edit
この人になら意識どころか命をを奪われても全然かまわないよ。
名状しがたきもの : 2007-04-17(Tue) 16:42 URL edit
僕っ娘に萌えたのは初体験です。
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