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沼人村

近所の子供達は 僕の姿を見ると 『ポマード!』と三回叫びます。

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煙撒残滓。

香菜子さんはいつも僕をビックリさせてくれます、いつも思いもよらないトコロからビックリ箱みたく飛び出してきて、僕を驚かせてくれるのです。

仕事に出かけようと家のドアを開けたら香菜子さんが 「ワッ!」 とドアの影から躍り出てきてギャッ!と云ったことがあります。

僕の部屋の洋服箪笥を開けたらいきなり香菜子さんがズビュンと飛び出してきて、ビックリしたことがあります。

僕の職場の更衣室のロッカーを開けたら香菜子さんが内からコッチを覗いていて、腰が抜けそうになったことがあります。

何度も何度も香菜子さんにはビックリさせられました、けれども僕もバカじゃありません、何度もビックリさせられるうちに彼女のパターンが読めてきました。

この前、喉の渇いた僕は麦茶でも飲もうと冷蔵庫を開けようとしたのです、けれどもなんとなく予感がして、 「香菜子さん、います?」と冷蔵庫に向かって声をかけました、すると冷蔵庫のドアがギィと開き、とても悔しそうな顔をした香菜子さんが冷蔵庫の中にいて、「ちぇ、見つかっちゃった」だなんて云うのです。

僕に見つけられるようになったのがよっぽど悔しかったのでしょう、香菜子さんはソレからしばらく穏行の特訓をしたらしいのです、三ヶ月ほど僕の前から姿を消してしまいました。

僕、夕食の買い物に行き、お惣菜コーナーからほかほか出来立てのジャガイモのコロッケを買い、ソレを肴にビールの一杯でもやろうとホクホク顔で帰宅したときのことです、家の玄関前に香菜子さんが立っていました、香菜子さんを見たのは三ヶ月ぶりであります。

やあ、久しぶりです、何をしてたんですかと香菜子さんに聞いてみたのですが香菜子さんはウフフと不敵に笑い、 「今度は絶対に見つからないわよ」 だなんて云います。とにかく久しぶりなんですから、僕の部屋にあがってお茶でも飲んでいってください、少しばかり散らかってますけれども。

僕は香菜子さんを部屋にあげ、お茶請けに買ってきたばかりのコロッケを卓袱台の上にのっけて、香菜子さんにお茶をだそうと台所にたちました、お茶を沸かし戻ってみると、香菜子さんの姿形がありません、またどこかに隠れたんでしょう、僕をビックリさせようったって、そうはいきません。

僕、香菜子さんの隠れてそうなところに声を掛けてまわります、洋服箪笥の中、押し入れの中、冷蔵庫の中、旅行カバンの中、探したけれども香菜子さんは見つかりません、もしやコッソリ部屋の外に出ていったのかと部屋の入り口を見ると、キチンと錠がかかっていて外には出ちゃいないようです、はて、香菜子さんは何処に行ったのやら。

探します、部屋中をさがします、けれども香菜子さんは見つからなくて、いい加減に探しくたびれた僕は、香菜子さんに出そうと思っていた冷えたお茶を飲みます、もうすっかり冷えてしまったコロッケを手に取り一口かじり、モシャモシャと咀嚼します。

イヤに鉄臭い味のコロッケだなあ、と手に持ったコロッケを見てみると、コロッケの一口かじったトコロから真っ赤な血がボタボタ溢れてきていて、かじったトコロの断面から、一つの眼球が恨めしそうに、コチラをジッと見つめていました。
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2024-01-06(Sat) | 未分類 | comment : 0 | Trackback : 0 | 

橤う蜉。

平日の夜 住宅地のど真ん中 突如 大輪の花火が打ち上がる。赤 青 黄色 夜空を明るく染め上げて 次から次へと打ち上がり続ける。

窓から見える数々の花火に 「変ねえ 今日 花火大会があるなんて 聞いていないけれど」なんて云いつつも 夜空の花火の綺麗さに 浮き足だって家族総出で見物に出掛ける人々。

かたや カーテンを閉め 何も見えない知らないと無視を決め込み閉じ篭もる人々。「あんなに間近で大きく見える花火なのに 音が聞こえないのは きっと ダメなやつだ おい 外の犬も中にいれておけ」

花火の閃光は 夜空を染める 赤く 白く 青く 緑色く。音の一つもなく 綺麗に染めて 花火見物をしている家族 花火を見上げる飼い犬 その時外にいた全ての生き物を色取り彩って。 聞こえるのは人の話し声と 夜鳴く虫の音だけ。

一際大きな花火が上がり 開き 拡がって散り キラキラとした残滓が消えて 明るい夜空は暗く黒く星の光も月明かりもなく 人々の話し声や虫の音も消えて音一つなく 花火大会のようなものは終わる。

花火大会のようなものを見物に行った人々は行方知れずとなり二度と戻って来ず 外にいた犬猫や虫も い無くなった。 




2023-08-01(Tue) | 未分類 | comment : 2 | Trackback : 0 | 

下書き供養 虹散じ。

「今夜 虹を見に行きましょう」

と 彼女は云いました。 夜 暗くなってから 虹なんて見えるものなのでしょうか と 訊くと

「夜にしか視えない虹もあるのよ そろそろ あなたにも視得る時期だと思うから お誘いしてみたのだけれど」

彼女はモジモジとスカートの裾を指先でねじねじ捏ねて 上目遣いで僕を見ます。 彼女の そんなおねだりする姿をみるのは もう二年ぶりのことですから それじゃあ見に行きましょうよ それが 僕にとっても君にとっても 良いことなのでしょうから。

2023-07-30(Sun) | 未分類 | comment : 0 | Trackback : 0 | 

下書き供養 頭蓋骨持ち歩き少女。

「『昔 あなたの目がキラキラして綺麗に見えたことがありました。 けれど 今にして思えば あなたの目の輝きは アレです けして綺麗なものじゃなかった。 キラキラ虹色に見えたのは 産廃沼のヘドロに浮かぶ 油膜の虹色のようなもので 綺麗じゃない 汚い 触りたくない 不快な輝きであるのです 今も あなたの目は 濁った油膜の虹色でギラギラしています』」

と 僕の目の前 真白けた頭蓋骨を抱えた女の子 椅子に座らせられて黙っています 彼女の抱えた頭蓋骨 顎骨カタカタ開け閉め動き。

「『あなたは 共同作業が苦手だと云っていましたが その理由もわかります。 あなたはわかりませんか。 あなたは 人の心を読みます その人が次に何をしようとしているのか だいたい解ります 先読みして その人の先手を取って したり顔です 『ああ こんな時にアレがあれば』って場面で『こんな事もあろうかと』と得意げにソレを取り出して見せて いい気分になるのが好きなあなたが なんで他人との共同作業が苦手なのか 共同作業に不向きで 結局疎外されるのか 二人組みをつくるのに何時も独りぼっちなのは 修学旅行の班分けで余るのは 何故なのか わかりますか。 あなたは 人の心を読みます 人の気持ちを解ったつもりになっています けれども あなたは 『他の人が自分に対して何をして欲しいのか』を想像することが出来ません 自分勝手に 自分の考え付く最適な行動理由で動きはしますが それは 『他の人があなたにして欲しい行動』であるとは限りません むしろ 他の人の邪魔になることをしているのです だから 他の人はあなたに注意忠告いたしますが あなたはソレを 『俺のすることを君が理解できないのは君が俺の様に先を見通すことが出来ないからなのだ もし君が俺の様に見て思い行動することが出来るのだとすれば 君は道を見つけ 道は君についてくるのに。 ソレが出来ないに君が 俺に忠告だと おこがましいにも程がある だったら君は 君の思うようにするがいい 君が欲することを為すがいい 結果 ソレは不幸で不運なことになるだろう 俺の云うとおりにしておけばよかったと後悔することだろう 俺はソレを黙って見ていよう』 だのと 不遜傲慢にも程があります だからアナタは嫌われて アナタは誰からも相手にされません』」

腹話術をしてる風に 彼女の口唇 閉じて動きはしないけれど 頭蓋骨がお喋りでもしてるかのように 顎骨の開閉にあわせ 声は続きます。

「『アナタは他人に混じれませんし交じれません アナタの周囲は白々しくて空々しいです アナタが其処に居ることに違和感を覚えます 自覚があるでしょう 自分が異物である 間違い探しゲームの間違いである 他の人が美味しい美味しいと食べているモノをアナタは食べ物としてみることが出来ない 他の人の手前 美味しそうに食べるフリはするけれど ソレは何の味わいもなく噛み砕いて飲み込むことも出来ず 口の中で延々と咀嚼するだけの人。 アナタは一人で独りです 嫌われ避けられ疎まれて 孤独を愛しているなどと嘯くものの人恋しくて堪らなくて ツガイがありません 』」

無能の仮面を被って生きることはとても楽です 重荷のない生活は健やかです 出来ないことをしない生き方 無理をしなくてもいい 他人からどう思われても関係なく 出来ることだけを出来ることだけして生きること なんて素晴らしい。


ああ ああ だけれどもけれども 無能木偶の坊の仮面を被って生きているつもりが 何時しか木偶の坊無能そのものになって 仮面を脱ぐことすら 生き方を正すことすら出来ないとは ぬるま湯を抜け出せないとは。


ああ 激しい感情を厭うという事 喜びに昂ぶる事なく怒りに我を無くする事も無い事は 哀しい程に楽な生き方であるという事を 感情のない藁人間である事が とても

2023-07-30(Sun) | 未分類 | comment : 0 | Trackback : 0 | 

囀。我が国はクカタチシステムを導入しました。

彼が云いました。

「先程 神様みてぇなヤツが顕われました。 其れは ルールを組み替え 仕組みを弄り 現実を変容させます。 戯れに 人々の願い祈り思いの類を 感じ聞き取り叶えます。

で これもつい先程なのですが 何処かの誰かが呟いた 『この国では同性同士が結婚する事は許されないのか?』の問い掛けを 神様みてぇなのが耳ざとく聞きつけて こう云いました。

『許すも何も 結婚したいなら すれば良い』

その事から つい15分ほど前 この国では同性婚が法に則り許可されました。

更に 其れが云う事には。

『結婚したいその二人が 男と女だろうが男と男だろうが女と女だろうが 愛し合っているなら結婚すればいい 愛し合っている事を証明できるなら 結婚すればいい。 そうしよう それを証明できないなら 結婚できない そのようにしてしまおう』

神様みてぇなヤツが決めた次の瞬間には 全ての役所の婚姻届を受け付ける窓口に 壺が設置されました。 壺の中は 熱く煮えた泥が満ちてうねり沸騰し続けています。

婚姻届を提出されるお二人は 諸々の書類の提出と一緒に この壺の中に手を突っ込んで戴きます。

お二人が真に愛し合っているのなら 熱く煮えた泥の海に手を入れても 無傷でしょう。 しかし それが偽りであるのなら 瞬時に煮崩れます。 ご理解いただけましたか? では どうぞ」

2023-02-18(Sat) | 未分類 | comment : 1 | Trackback : 0 | 

囀。如何にして吾は。

彼は云いました。

「行方不明者というのがいる。己の意志によるものか 事件事故災禍に巻き込まれたものか 認知が曖昧になって自分が何処の何誰かわからなくなってか 音沙汰なくなり見つからなくなってしまった者たちだけれど 僕もきっと いずれ 行方不明者達の仲間になってしまうのだと思う。

その時は 僕のことを探したりしようとしてくれなくていい その時は 僕が怪異になってしまったのだと思えばいい」

怪異?

「僕は 夕暮れ時を跋扈する 都市伝説の怪異に成り果ててしまったのだと 思えばいい。 そんなものに 僕は昔からなりたかった。

遅くまで遊んではいけない 危険なところに行ってはいけない 静かな所で騒いではいけない 食べ物を粗末にしてはいけない。

それらを破ると アレが来るぞ のアレだ。

警告 教訓 ルール破りに唐突に与えられる罰則的な怪物だよ。

目を潰されたり舌を抜かれたり指を折られたり何処かへ連れ去られたりの罰を与えるとされるヤツ。

ハーメルンの笛吹男 赤マント 首なしライダー ベッドの下の斧男 風船おじさん タキシード仮面 チクワと鉄アレイを交互に投げつけてくる男 そんなものに そんなモノになりたかった。 近いうちに なる 成り果てる。 教訓めいた寓話めいたヘンテコなモノに。

僕がいなくなって 何か聞いたこともない都市伝説が聴こえてきたら それは僕だと思えばいい。

窓から部屋の中に忍び込んできた中年男性。部屋の中にいた女児に『今はこれが精一杯』と股間のチャックから取り出した花一輪を手渡し 再び窓から飛び出し何処かへ立ち去り」

ただの不審者じゃねえか。





「不審者の情報です。女児に対する声がけが発生しました。

早朝の公園で男の声で「こんばんは」と声をかけられ周囲を見回しても誰も居らず 再び背後から「こんばんは」と話しかけられ びっくりして振り返ると 急に周囲が真っ暗になり 驚いて逃げ出したとのこと。女児に怪我はありませんでした」


2023-02-04(Sat) | 未分類 | comment : 0 | Trackback : 0 | 

囀。月の光が照つてゐて。

彼女が云いました。

「今日の月は綺麗で大きくて 写真に撮って残せておけたら とても良い と思って手持ちの携帯電話で写してみても 何故だかガッカリするくらい小さな月が写っていて 不思議に思うこと あると思います。

でもそれは不思議でもなんでもなく 本当の月は 小さいのです。

写真に写る月の大きさが真実の大きさであるというのなら 実際自分の目に映る月の大きさはなんなのだろう?と思われるでしょう。

実のところ 月というのは 目にする人それぞれによって 大きさが違います。 視え方に個人差があるのです。

人によってはビー玉くらい 人によってはピンポン玉くらい 人によってはソフトボールくらい。 その日の天気 月との距離 観る人の体調によって 多少大きくなったり小さくなったりはありますが 個人各々で 月の大きさは違って見えるのです。

いや そんな事はない 月の大きさが観る人によって変わるだなんて ないだろう? と思われるでしょうが考えてごらんなさい。自分には月の大きさがこのぐらいに見えるけど 君はどのくらいの大きさに見える? なんて 話を誰かにしたこと ありますか?

ないでしょう。 皆 自分と同じ月を見ているのなら 同じ大きさであるだろう と思い込んでいる。

今度 誰かに聞いてみるといいですよ 自分が思っている以上に 大きさの認識に差異がある。

それでは 何故 本当は小さな月が 人によって大きさが違って見えるのでしょう?

それはきっと 見るその人の 何かの器の大きさを示す指針なのです。 自分が内包する何かの量の過多過小なのです。 何かの質の純度の高低なのです。

それらによって 月は 観る人によって 大きさを換えるのです。

じゃあ その何かってなんだよ とお思いでしょう? わからないのです 何が原因なのか その何かの過剰過小で何が起こるのか その何かで何ができるのか 本当に分からない 分からないから困っているのです。

困っているのです あの月をどうしたらいいのか。 夜 見上げる度に目に余る 転げ落ちてきそうな程に危なげな 目を瞑っていても眩しい程にギラギラ光る 空を覆い尽くさんほどに巨大な あの月を!」

その後 彼女は 自らの両眼を抉り毟り潰した。

2023-02-02(Thu) | 未分類 | comment : 0 | Trackback : 0 | 

煙撒断片。久冨さんの土産話 3



ガッ ゴッ ゴッ

「…でね そのダルマ市で有名な 星の神様を祀ってる神社なんだけれど その祀られてる星の神様ってのがカガセヲ別名アマツミカボシって名前の神様でね タケミカヅチが国譲りを迫ったときに一番最後まで抵抗した神様なんだ」

ガッ ゴッ ゴッ ゴン

「カガセヲは手強くて 武神のタケミカヅチやフツヌシの手に余り 最後の最後 織物の神様であるところのタケハツチによって退治されたという。 その死に様は 縄で縛られ四肢をもがれ片目を刳り貫かれるという凄惨なものであったと俺は予想する。 というのは さっき言った『ダルマ』だ。 すなわち 手足が無くて 片目が無い」

ガッ ガッ ガッ ゴッ ゴッ ゴン

「で 面白いのはね このカガセヲってのが夜にちらちらと輝く星の「蛍火の光く星」の一神と考えられる事から 明け方に太陽を脅かして消える金星のことではないか という説がある つまり『曙の明星』だね。」

ゴッ ゴゴンッ ガッ ガッ ガッ ゴッ ゴッ ゴン ゴガッ

「実はね 遠く離れた西洋に 同じ この『曙の明星』の名を持つ ルシファーって堕天使がいるんだけれども これと関連付けて考えるとだね…」

久冨さん 久冨さん

「なんだね佐々木(仮名)君 まだ話の途中なんだけれど」

や 面白くてためになるお土産話の途中というのは重々承知の上なのですが 久冨さん さっきから 久冨さんの腰掛けているソレ その木箱のあたりから なんか 音が聞こえるのですが

「音?」

ドッ ゴッ ゴンッ ドガッ ガッ ゴッ ゴッ ゴン ゴガッ

ほら その箱の中から 音が聞こえてくる

「ああ この音か 気にしなくていい これも今度の旅で手に入れたものだよ 裏ルートで闇オークションに流れていたのを偶然手に入れる事が出来た」

なんすか そのウラとかヤミとかって。 で その箱の中身はなんなんです?

「ヴィーナスの両腕 だよ」

ヴィ ヴィーナスって あの ミロのヴィーナスとかのヴィーナスですかい?

「うん その ミロのヴィーナス ってのは違うけれども かなり惜しい」

惜しい?

「ミロのヴィーナスってのはねえ ギリシャのどっかの島の土の中から発見されたんだけど 発見された時 六つのパーツにばらされていたそうだ で その六つを組みたてたのが 今の両腕がない姿。  両腕は探しても見つからなかったそうだよ」

じゃ じゃあ その箱の中に入ってるのって ミロのヴィーナスの 発見されなかった両腕なんですか?! 大発見じゃないですか!

「違うって云っただろう コレは ミロのヴィーナスの両腕じゃあない。 もっと 別のモノだよ」

別のって。 じゃあ 何のヴィーナスだってんです

「まあ聞きたまえ 俺がコレを手に入れたとき説明された話。 ミロのヴィーナスの両腕がない理由だよ。 なんらかの理由で両腕がもぎ取られたとか 両腕が後で発見されたけれども誰かに盗まれた とか そんなんじゃない。 ミロのヴィーナスには 最初から腕が なかった。 最初から 両腕を欠いた姿で 彫られた」

ソレは 随分と突拍子もない話ですな

「ミロのヴィーナスは 別のヴィーナス像を模倣して彫られたモノなんだそうだ。 で その別のヴィーナス像を模倣するとき ソレの両腕が欠けていたため正確に模倣することができず 仕方なく両腕を欠いた姿のまま完成させたそうだよ」

なんか 眉唾ですが

「で 俺が手に入れたのが その模倣された方の大本の 欠けた両腕 って訳だ」

うわあ インチキくさいなあ

「何がインチキくさいものか 俺は コレを本物だと思うぞ ちゃんと理由もある」

理由って なんです

「その前に その模倣された大本のヴィーナス像の両腕が欠けた時の由来ってのを話したげよう。

もう千五百年以上も昔のことだよ とある名工がいてね。 彼の作った彫刻は 本物そっくり 本物よりも本物らしく 生物以上に生々しかった。 そんな彼が ヴィーナス像を作った。 まるで本物 生きてるようで 美の女神が乗り移ったかのよう。 虜になる男も数多 恋人を捨ててまで崇める男もいたそうだよ。 で 嫉妬に狂ったのが 恋人に捨てられた女。 彼女にしてみりゃ たかが石の像に恋人を奪われた訳だから面白いわけがない この憎いヴィーナス像を貶して謗って穢してやろう ってことで ある夜 道具片手に忍びこみ。 鈍器で鼻の頭をコチンとやって 二目と見られぬ面にしてやろう と 鈍器を振り上げた。 けれども それを振り下ろす事 できなかった。 なんでだと思う? 正解は この箱の中」

立ちあがった久冨さん 腰掛けていた木箱の蓋を外して見せてくれた中身は

「次の日の朝 彼女は発見される。 生きているようなヴィーナス像に 首を絞められて断末魔を叫ぶ姿でね。 痙攣する彼女の首からヴィーナス像の手を外そうとしても外れず 仕方なく ヴィーナス像の両腕を切り落としたけれど手は首から外れず一層食いこむばかり。 神罰か何かの所為か 彼女は息絶えることも出来ず 死ぬ間際の断末魔を叫び続けて 現在に至る」

箱の中身 飛び出た目玉 土色の顔 ひゅうひゅう漏れる断末魔 首にしっかりと食い込んだ大理石の両腕 ソレをもぎ離そうとガクガク痙攣 死に続けている異人の女性 ゴロゴロともんどりうって 箱の内側 ゴツゴツと体当り。 先刻からの音はコレか

  「千五百年以上も昔から コレから先の永遠 死に続ける彼女の他に 俺がこの両腕が本物だと思う理由は 何か必要かねえ?」

2023-01-17(Tue) | 未分類 | comment : 1 | Trackback : 0 | 

煙撒断片。水蛍

蒸し暑い季節となりました。
仕事 終わって帰宅して ドア 開けた途端に噴き出すほどの篭った熱気にほとほと嫌気がさしまして。 冷房なんてブルジョアなモノ 部屋になくて。 そうだ こんな時には夕涼みに出掛けよう 夕涼みにはうってつけな 秘密スポットが近場にあるのです。

冷蔵庫から取り出したる 冷えた缶ビール片手に徒歩5分 石段登った神社の裏手 うっそう繁る森の陰 小さな池がありまして。

小さいけれど 昼間に星を映すほどに深い その池 丁度今ごろ 夕間暮れを過ぎて星がでてくる頃合 蛍火にも似た 陰気に瞬く青い燐光 池の底にきらめいて見えるのです。

薄暗いなか陰惨と明滅する青白い光と 森から吹いてくる涼しい風とが相俟って 今にも幽霊が出てきそうな雰囲気 肝が冷えて夕涼みには良い塩梅で。

どれ 光の蠢く様子をサカナにビールを飲もうか と 池のほうに近付くとですよ 女の子の声がします。 ま まさか もしかしたら女の子の幽霊が! などとビックリしかけたのですが 聞き覚えのある声 草陰に隠れてヒョイと覗いた池の端 学校帰りと思われる女の子二人。

「ほんとだ ひかってる!」

「ふふん すごいでしょ」

なんて 二人して池を覗きこんでいる女の子の片方は 僕ん家の近所に住んでるサツキちゃんじゃあないですか

ああ この間 夕暮れ時に寂しそうにしていた鍵っ子のサツキちゃんを誘って遊んだとき ココの事を教えてしまったのだ あんなに『二人だけの秘密だよ』って約束したのに もう サツキちゃん クラスの友達にばらしてしまったのかい ねえ

「ねえ なんで池の底がひかってるの?」

「んっとねえ この池には『水蛍』がいるんだってさ」

「水蛍?」

「あたしの近所の男の人に教えてもらったんだけど なんか 発光する原生生物の一種らしい ってさ。 水の中に蛍がたくさんいるみたいに きれいにひかってるでしょ」

「うん ほんと きれい 星みたいのが いっぱい」

「近所の男の人 『ガラドリエル奥様の水盤に映る星のようだろう』 だなんて よくわかんないこといってたけど ね」

「そうね」

星みたい だなんて。 水蛍は そんなロマンティックなものじゃないのですよ。

アレは 厭らしい屍骸の光りなのです ウネウネの原生生物が 動物などの死体にビッシリと食いこんで 消化するときに発する光なのです。

「今度 クラスのみんなを連れてこようよ。 理科の先生も連れてきてさ」

「あ いい考えねえ。 教室の水槽で飼えるんなら 飼おうよ」

だなんて なんてことを云っているのでしょう 彼女達は。 僕の秘密の場所に みんなを連れてくるって アレがばれたら どうしてくれるんです

第一 彼女達は気が付いていない 池の底 揺れる燐光 それらがみんな 人間の形をしてるってこと 彼女達は気付いていないのだなあ ああ サツキちゃん 君も 前の女の子達と同じく 僕との約束を破るからいけないんだ。

 

サツキちゃん 君と 君の友達 一緒に あの光の仲間にいれてあげるよ ねえ

2023-01-16(Mon) | 未分類 | comment : 7 | Trackback : 0 | 

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破綻したまま完結する。

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