沼人村

近所の子供達は 僕の姿を見ると 『ポマード!』と三回叫びます。

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しめて とめて とどめる。

 知人の彼 絵を描くので 僕にモデルになってほしい と云うのです。

 彼の描く静物画は天下一品で 写実的にも程がある 写真並みに精密で 手で触れるほどの現実味がある そんな絵を 彼は描けるのでありますが 彼が描けるのは 静物画だけでありまして。

 人物とか風景の絵を彼が描くと 巧い んだろうけれども どこか歪んで バランスの悪い とても見ていて気持ちの悪い絵を描き上げてしまうのです。 どっちを描くのも似たり寄ったりのことだと思うのだけれども なんでこんなに差が出るんですかね。

「そりゃあ 私は 在りの儘しか描けないからさ。 私の目に見えるもの 色彩 質感 その他諸々を そのまま写して移して映す という それだけのこと。 静止しているものなら この方法で巧く描ける けれども 人とか動物とか風景とかは 静止していないだろう。 木の梢や花木は風でそよぐし 雲は棚引く 犬は駆け回るし。 人体だってそうだよ 一見 じっとしているように見えるモデルの人も まばたきをするし 呼吸するし 心臓の鼓動に震えもするし。 その微妙な動きでも 描いてる最中に どんどん ぶれて 揺れて ぼやけて 歪む。 だから 私は動いていないものしか 描けないんだよ」

 んじゃあ アレですよ 動いてるものを停めればいいじゃないですか 例えば カメラで撮って その写真を見ながら描けば ソレは停止して動きませんよ。

「そんなこと とっくにやってみたよ。 コレが ソレだ。 風光明媚な風景の写真を見て描いた。 どう思う?」

 ええっと それこそ写真みたいで 巧い と 思うんですが しいて云えば 薄っぺらくて 厚みがない まるで 観光名所にある顔だけ出せる書割みたいな 絵 ですね。 君がいつも描く絵とは雲泥ですよ。

「うん つまりは 風景を描いた んじゃなくて 風景の写っている写真を描いた という違いなんだろうねえ」

 本当に 君が静物画以外の絵も描けるようになったのなら きっと世に名だたる画家と称されることだろうに 残念なことです。

「しかし まあ モノは考えようとはよく云ったものだよ。 最近完成した この絵を見てくれないか 僕の妻と息子を描いたものなのだけれど」

 うわあ 君 人物画も描けるじゃないですか すごく巧い まるで 額の中に本物が居るみたいで 凄いですよ。

「色々と試行錯誤の結果だね ある方法を思いついたんだ。 最初は 昆虫 次はお魚 ハムスター 猫 犬 と 徐々に描くものをスケールアップしていって よくやく人にまで行き着いて行き尽きた。 本当に簡単なことだったんだ 生きているものが生きている限り 震えて息づいて身動きをするのなら それをしないように出来ないように 絞めて 停めて トドメをさしてしまえば 僕にも描ける。 どうだい 僕の 妻と息子の絵 まるで すぐ其処で 死んでいるように見えるだろう?」

2008-06-18(Wed) | 未分類 | comment : 4 | Trackback : 0 | 

めどうさ。

 僕の知人の久冨さんは 自由人を気取った住所不定無職の浮浪人で 暖かい気候になると何処からかフラリとやって来て 橋の下にテントを張って暮らしています。

 散歩がてら 土手を歩いていますと やあ 見慣れたボロテントがあって 久冨さん 帰ってきてるじゃないですか。

 久冨さん テントの脇の朽ちかけ丸太に腰掛けて 自家製煙草をキセルに詰めて プカリプカリと燻らせています。 やあ 久冨さん 帰ってきてたんですねえ。

「おや 佐々木(仮名)くんじゃあないか ひさしぶり」

 今年はいつもに比べて帰ってくるのが遅かったんじゃないですか? いつもは春頃にはテントを張ってたのに。

「うん ちょいと 住み込みで割りのいい仕事があったものだから そこでしばらく厄介になっていたのだよ んで 忙しいのもひと段落だし 懐も暖かくなったんで またぞろ気楽な生活に復帰ってことさね」

 ふうん ところで 何の仕事をしてたんです?

「あーっと 煙突掃除 かな?」

 煙突掃除が 割のいい仕事ですか?

「うん。 煙突掃除っつっても 佐々木(仮名)くんの想像してるものとは全然違うだろうけれども。 ようし 土産話に このことを話してあげようか」

 わあ どんなことです?

「俺が働いてたところは 去年の冬頃 隣町に新しく建った火葬場だよ」

 火葬場の煙突掃除 ですか

「火葬場っつっても 最新式ってのは一味違うね。 物凄いテクノロジーが使われてる。 んで 煙突も すごく高い。 天まで届くほどの高さで ロケットの発射台かと思ったよ。 まさか! ココから遺体を発射して宇宙葬に?! なんてな」

 んなことない。

「まあ 実際には 何層ものフィルターが中に入ってて 燃やしたときに出る煙を越してるんだ。 なんでも 最近の研究じゃあ 人の身体には何だかんだの有害物質が生前に結構な量 蓄積されるらしくて もし普通に火葬にしたらば その煙とともに有害物質が外気に拡散して周囲の環境に悪影響を及ぼすんだとさ。 だから ソレを除去するために フィルターを何層も何層も張っている。 最後のフィルターを通るのは煙にあらず空気のみ どんなに小さなチリの一つも逃さずキャッチするという優れものだ。 俺がやってたのは そのフィルターの交換と整備さ 割と大変だったぞ 人一人焼くたびに そのフィルター全取替えしなきゃいけないんだからな。 それに 今年は 春先に人死にが続いたからなあ 大忙しだったよ」

 ああ そういえば あんな事がありましたからねえ。

「ところで佐々木(仮名)くん 霊には 魂と魄の二種類がある って 知ってるかね」

 こん と はく?

「一人につき 魂が三つに魄が七つあり。 魂は精神を支え陽に属し死後天に帰る。 魄は肉体を支え陰に属し地に帰る」

 ああ なんか聞いた事がありますよ。 道教かなんかのヤツですよね。

「人が死んだら 魂は身体から離れてしまう が 魄は身体に残ったままなんだ。 で 身体が土葬されるか火葬されるか鳥葬されるかして後 地に帰る」

 煙か土か食い物になるわけですな

「勿論 火葬の時は 灰になり骨になり煙になって ソレラが土に還ることで 魄は地に帰ることができるのだが 気付かないか?」

 何にです?

「俺がいた火葬場の煙突は 煙を排出しないよう 何層ものフィルターが掛かっている。 特に 一番最後のフィルターは どんなに細かいチリの一つも逃さない造りになっている。 もし 魄が煙になって地に帰るのなら」

 フィルターにひっかかって 地に帰れない ってことですか? ははは まさか

「で 佐々木(仮名)くんにお土産だ。 佐々木(仮名)くんの好きそうな年頃の女の子の火葬が 春先に連続であって ね。 その時のフィルターを何枚か失敬してきた。 どうだい 不思議なことに 女の子の姿が このフィルターに焼きついているのが分かるだろう コレは フィルターに捕らえられた彼女達の魄 なんじゃないかねえ?」

 そう云って 久冨さんが広げた 薄っぺらな紙状 灰色の中 くっきりと 煤で描かれた 女の子の姿。

 ギュッと目を閉じた 生きてるとも見紛うような 今にも動き出しそうな 女の子の姿。

 この春先に 隣町で 僕が殺した 女の子達の 姿が。

 今 一斉に 目を開いて 僕を睨んだ。

2008-06-08(Sun) | 未分類 | comment : 9 | Trackback : 0 | 

斯くしてハジシラズは誕生する。

 恥ずかしい人生を送ってまいりました。 やり直しの利かない事や取り返しのつかない事ばかりをやらかしてきました。 今となっては どうしようもない事なのでありますが 最早 慙愧の念に耐えません。

 未だ気力のある内は なんとかなる どうにでもなる などの 中身のないポジディブシンキングで どうにかこうにか遣り繰りしては来ましたが この頃は どうにも出来なくなってきました。

 夜 眠ろうとする時に 顕著です。 灯りを消して 目を瞑ると 今までやらかしてきた失敗過ち恥辱のドロドロヘドロ状の諸々が 一塊になって 記憶の底からウゾゾゾゾゾゾと這い上がってきて 凄く ドキドキします。 首筋がギュウギュウに凝り固まって 身動きできなくなります。 頭の中の一箇所が すごく熱をもって イイイーって感じになります。

 何時何処で誰に何をどうしたか などの細かいことを思い出してしまっては きっと 僕 どうにかなってしまいますので 思い出さないように 一生懸命 オマジナイを唱えて記憶に蓋をします。

『あの時は仕方がなかった』 と百回唱えます。 それでも駄目なら 『あの時はどうしようもなかった』 と百回唱えます。 それでもどうにもならないときは ひたすら『ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい』 と 唱え続けます。

 唱え続けているうちに 少しずつ首筋から力が抜けて グッタリして 眠りにつくことが出来そうになります。 が そんな時に限って 誰かが 耳元で囁くのです。

『お前 中学校のとき 美術の時間 『涙を流すピエロ』なんてのを描いて 僕の心象風景です なんて戯言を』ギャああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッ! 死ね! 死ね! 殺してやる!

 今まで一度も思い出し事もなかったような 思い出したくもないことを 誰かが 僕の耳元で囁いてきて そうなったらもう駄目です 身体中が硬直して 頸を前後に激しく振って 呻き声が自然に洩れてきます。 心がドス赤黒くなって 昔の自分を殺したくなります。 涙が滲んできます が 誰かの囁き声は 容赦しません。

『そういえば お前 手の甲に六芒星の形に引掻き傷を作って ソレを見せびらかして悦にひたってたよな』ああああああああああああああああああああぁぁぁぁあああああッ ガガガガガガガガガッガガガガッガガ 今すぐ殺す絶対殺す死ね死ね死ね

『当時好きだった女の子に匿名で出した ポエム紛いのラブレター』ぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ スイマセンスイマセンスイマセンスイマセンスイマセン勘弁してください許してください それは僕の仕業じゃありません本当です 本当ですって!!

『自分の書いた小説を印刷して隣の席の女の子に見せたよね』 ひぎぃぃぃいぃぃいぃぃいぃい!  殺せ!殺せ!殺してください!死にますから!すぐ死にますから!

 他の人にとっては取るに足らないような けれども自分自身にとっては思い出すだけで死にたくなるようなことを 一度思い出すと 次々と思い出したくないことが芋蔓式で 頭の血管が切れそうになるまで息が詰まって 涙で顔中ドロドロになって 頭の中の一箇所(きっと恥ずかしさを司る部分なのでしょう)が物凄く膨らんで熱くなる感じが止まらなくなって 全身筋肉痛が残るくらいに身体がこわばり続けて 体力が消耗しきってようやく 半ば失神するように眠りに落ちます。 次の日目覚めた時には精も根も尽き果てていて 何もする気が起きません。

 こんなのを毎晩繰り返していたら 寿命が縮むというものです こんなんじゃいけないと 僕 思いまして この発作的なモノをなんとか制御出来ないものかと考えまして。 夜毎 発作が起きる度 色々と試してみたのです。

 浮かび上がってくる厭な思い出に苦しまないようにする為に 蓋をして封じ込めるイメージ 自分が岩になったつもりで心を動かさないようにするイメージ 厭なことを思い出しそうになった瞬間にさまざまな方法で自分自身を殺すイメージ 等々試してみましたが その中で 一番具合が良かったのは 圧縮して捨てる方法です。

 まず 厭なことを思い出しそうになったら 悪魔六騎士の内の一人 ジャンクマン 的な人を想像します。 その人に 厭な思い出を 上下左右 ガッシンガッシンと挟んでもらって小さく小さく小さく圧縮してもらって 小さな立方体にしてもらいます。 でも そのままだと 元の大きさに膨らんでしまうので ルービックキューブみたいにガチャガチャに捻くり回して復元できないようにしてモザイク状にします。 その後 二度と思い出さないように 想像上の底なし沼に投げ込んで深く深く深く沈めます。 厭なことを思い出しそうになるたびに 何度も 何度も 何度も繰り返します。 そうすれば 安心できます。 ゆっくり眠れます。

 この方法に行き着いてからというもの 夜度悩まされる発作に困ることもなく ああ 本当に良かった と思っていたのです でもですよ 毎晩毎晩 繰り返しているうちに 想像上の底なし沼が 厭な思い出立方体で埋められて もう呑み込めなくなって もうすぐ 余地がなくなります。

 そしたらですよ 今まで捨ててきた厭な思い出恥ずかしい思い出が逆流して 溢れ出てきて そうなったら僕 恥辱の余り 舌を噛み切って死んでしまうじゃないですか。

 で どうにかいい方法がないか 考えたわけですよ。 これ以上 厭な思い出恥ずべき思い出を 思い出さないようにする方法をです。 けれども どんなに思い出さないようにしても ちょっとしたキッカケで思い出してしまうのが この手の穢れた思い出ですよ どんな手を使っても駄目でした 思い出すことを 止められません。

 ならばどうしましょう と思案に暮れた末。 逆に考えればいいんだ 『恥ずべき事を思い出しちゃっても 恥ずかしいと感じなければいいさ』 と 考えるんだ。 と 思い至り。

 用意いたしましたのは 氷 アイスピック 金槌。 氷を右目に押し当てて 感覚が消えた後 アイスピックを眼窩に当てて 金槌で コツン。 アイスピックの切っ先が 薄い骨を突き破り 僕の頭の中の 厭なことを思い出すたびに熱くなって膨張する袋状に突き刺さり ペシャンコにパンクさせます。 

 理論上は これで 過去に犯した恥ずかしい事を思い出しても 恥ずかしいと感じる部分が働かず 平気なはずです。

 試しに 思い出してみました。 あのときの自分がカッコいいと思ってやっていたこと 今思い出すとぶん殴ってでも辞めさせるべきだった間違ったオシャレ 自己陶酔の数々。 うん 全然平気 へっちゃら なんともありません 恥ずかしいとも思いません。 成功です。

 僕が今まで秘めていた特殊な性癖を大声で叫んでも 全然恥ずかしくありません。 眠っている女の子にエロイ事をするシチュエーション がとても好きです! うん 成功です。

 もう 僕は どんなことを思い出しても これからどんなことをしでかしても ソレを恥ずかしいと思うことは 絶対にないんですよ!

 凄いとは思いませんか ええ そうです それが 今 僕が こんな真昼間の商店街 一糸纏わぬ全裸のお姿で 満面の笑顔をして練り歩いていられる理由ですよ お巡りさん。

2008-06-01(Sun) | 未分類 | comment : 8 | Trackback : 0 | 

寝言は寝てから言うべき。

 彼女が云いました。

「私は神様を信じています。 私の中の神様を信じています。 自分の中の曲げてはいけない大切なモノ 曲げられない大事なモノのことを 私は私自身の神様として信じています。 けれども 宗教は信じていません あなたが私に対して信じるように勧めてくる宗教とやらは 信じることが出来ません。

 あなたの云う宗教ってのは 何処かの何方様かの中にいる神様を 他の皆で一緒に信じようっていう仕組みでしょう? 共有しようって仕組みでしょう? 私に私自身の神様がいるように その人自身の神様がいるってことはわかりますので 尊重はしますが共有はしません できません。 

 え なんですって 私自身の神様を信じるより あなた方の神様を信じるほうが 幸せになれる と。 あなた方の神様を信じなければ 不幸になる 死後 地獄に落ちる と。 面白いことをおっしゃいますね 私が私自身の神様を捨てて あなた方の神様を信じることとなったら 私は不幸です。 そのかわり あなた方は相対的に幸せになるでしょう。

 何故ならば 宗教を信じるということは 不幸なことです。 宗教ってのは元来 共通の不幸 例えば差別 例えば弾圧 例えば迫害 そんな恐怖的なモノに耐えて抗う為に皆が寄り合う旗印みたいなものじゃあありませんか 独りでは耐えられない支えきれない抱えきれないソレ等を 皆で分配して堪えられるようにしましょうって そういう仕組み じゃあありませんか。

 あなた方が 宗教に勧誘してくる 信仰を押し付けてくるってのは そういう理由だからでしょう? 『誰か一人でも多くにこの重荷を背負わせよう そしたら自分の重荷の幾らかを肩代わりさせられる 少しだけ楽になれる』 と。 だから 私があなた方の宗教を信じることともなったら あなた方は相対的に幸せになって 私は背負いたくもない不幸を負わされて 不幸のどん底です。

 うん 自ら求めて その道に入る人もいるでしょう 私はその人のことを否定するわけじゃあありません そういう人は 元からとんでもない重荷を背負ってる人です その重荷をいったん預けて皆で共有しようって事なら よく出来た仕組みだと思いますよ。

 けれども あなた方のしていることは アレです 濡れ女みたいなことですよ 妖怪の。 いきなり赤ん坊を抱いてくれって頼んできて 抱いた赤ん坊が石になって張り付いて取れなくなって動けなくなって その後 牛鬼に美味しく頂かれました? 冗談じゃありません。

 真っ平御免蒙ります 私は自分自身のことで精一杯です あなた方の不幸を背負い込む気はサラサラありませんので悪しからずご了承ください あなた方の死後行くところが極楽じゃないことを心よりお祈りいたします 連れが待っているので失礼します」

 そういって彼女 くるりと振り返って僕の腕に抱きついて。

「ね あなたもそう思うでしょう? 同じ宇宙大僧正様の教えを信じるモノとして アストラルパワーに導かれたモノとして 天球を護る光闘士の一人として」

2008-04-28(Mon) | 未分類 | comment : 5 | Trackback : 0 | 

Blind autumn

「あなたが 私のことを どう思っていたかなんて勝手なことです。 けれども 私にとって あなたとの事は ただの遊びでしかありませんでした。 あなたが私に真心からの好意と愛情とを注いでくれたのは知っています けれども 私にとってのあなたは ただの玩具 私に弄ばれるだけの存在 という意味合いしかありませんでした。 ええ あなたは玩具です 私に弄ばれることでしか面白くない つまらない男です。 周りの人からも あなたの事を『つまらない人間』だの『どこがいいのか全然分からない』と よく云われたものです。 本当に平凡でつまらない男ですね あなたって。 ああ そんな泣きそうな顔をして その滑稽なこと とても面白い。 最後の最後まで 私を楽しませてくれるわねえ。 ああ それにしても そんなあなたを玩具にして弄ぶのは とても楽しかったです 周りの人は ソレがわかってない あなたという男がつまらなくとも あなたという玩具で遊ぶことは つまらなくない とても楽しいことを 周りの人たちは最後まで知らなかった。 ふふ あなたという玩具で遊んで 楽しめたのは私だけだった ということでしょうね うん それに関しては 感謝するわ あなたと出逢わなければ 私は一生 死ぬまで退屈なまま 面白いこと 知らずにいたのでしょうね。 ああ 本当に あなたとのこと 遊びに過ぎなかったけれども 一生を費やすのに価値のある遊びだったわ ほら そんな泣き顔ばかりしてないで 最後の最後くらい 笑い顔を見せて御覧なさいよ このバカ玩具」

 僕の クシャクシャな泣き笑いの顔 ゆっくり撫でて 長いこと僕と連れ添った伴侶の彼女 微笑んだまま息終えて うねうねの冥途をゆく。 

2008-04-06(Sun) | 未分類 | comment : 16 | Trackback : 0 | 

駄洒落Gメン。

「最近 気になっているコマーシャルがあるの」

 と 僕の親類の娘さんであるところのミドリさんが云いました。 へえ どんなCMです?

KIRIN 淡麗グリーンラベルのなんだけれどね 意味がわからないのよ」

 ええっと たしか 外人五人組が大きな蕪を抜こうとしてるけれども抜けなくて そこに現れた着ぐるみ人形のジャンボマックスが 蕪を抜いてくれて 五人組が『ひさしぶりー』とか声をかける っていう内容ですね

「そう どういう意味なのか どういう意図なのか まるで理解できなくって 気になって気になって 夜も眠れないです」

 ふむ。 …んーっと ある程度の絵解きなら 僕程度にでも できると思いますよ この程度のこと なんでミドリさんが分からないのかが 僕にはわかりませんが。

「へええ 随分と大口を叩いたものね。 ホントに私を納得させるだけの絵解きができるんなら 私 佐々木(仮名)さんの云うこと 一つだけ聞いてあげてもよくってよ?」

 ふひひひ んじゃあ ミドリさんの肉を後で いえ なんでもありません。 えーっと まず あの外人五人組が ドリフターズの隠喩ってのは 当然わかりますよね。 CM内でも『エンヤーコーラヤ』とか『ダメダコリャ』なんてフレーズを挟んでますし それぞれ五人の容姿もそれぞれドリフメンバーに対応しています。 多分 『イインダヨ グリーンダヨ』と志村けん氏の『アイーン』の『イーン』を掛けたあたりからの繋がりでドリフなんだと思うんですが

「ドリフターズ世代じゃないので知りません。 えっと 仮にあの五人がドリフターズの隠喩だとしてですよ なんで蕪を抜こうとしてるんです? 発泡酒のコマーシャルと 全然結びつかないじゃないですか」

 そうですねえ。 んじゃあ 大きな蕪を抜くというそのままの内容のロシアの童話『おおきなかぶ』は知っているでしょう?

「んっと おじいさんが植えた大きな蕪を おじいさんが抜こうとしたけど抜けなくて おばあさんが手伝っても抜けなくて 孫娘も犬も猫も手伝ったけれども抜けなくて 最後にネズミが手伝ったら ようやく抜けた って内容でしたね」

 そう そのネズミの役どころが ジャンボマックスなわけですが。

「いや ですから なんで 唐突に あの着ぐるみ人形が出てくるんです? 全然 話に脈略がないんですよ?!」

 いえ あるんです。  ドリフが今知られている五人 いかりや加藤仲本高木志村になる前に もう一人のメンバー 荒井注が居ました。 ジャンボマックスは 荒井注に相当しているんです。

「え なんでです?」

 これも昔の番組になるますが 『風雲!たけし城』ってのがありました。 これに鎧武者姿のジャンボマックスも出ていて 番組内での名称は『よろい注』… ギョロッとしたドングリマナコが荒井注に似てるから だと思われます。 これでジャンボマックス=荒井注 であることはお分かりになりましたね。

「えええ そんな無理矢理な」

 ジャンボマックス=荒井注 ってことから 更に絵解きをしますれば。 なんで五人が大きな蕪を抜こうとしているのかが 解けます。 五人で抜けなかった蕪を 荒井注が抜いた。 童話の方では ネズミが最後に手伝って抜けた。 ネズミのおかげで抜けた ネズミ ネズミ ネズミはチューチュー鳴く チュー… ちゅう… 荒井注…ッ!!!!!

「ええええええ もしそうだとするのなら すごく分かりづらくて遠回りな駄洒落じゃないですか 誰に向けて そして なんの為なのか 一切わかりませんよ 更に云うなら発泡酒のCMとしてはなんら購買意欲を刺激しないじゃないですか」

 そうなんです。 CMとしては あまりに理解不能なのです。 が これはCMではない としたら まるで意味が変わってしまいます。

「CMじゃないって じゃあ なんなんですか」

 おおきなかぶ は ロシアの童話ですよねえ

「うん。 トルストイが書いたとかそうでないとか って話を聞いた憶えがあります」

 近頃 ロシアでは ウォッカの消費量が落ち込んでいるそうですね。 そして その代わりにビールの消費量が伸びているそうです。 ビールの消費量は世界第4位だか第3位で それに当て込んで 日本のビール会社も各社ロシアに現地工場を作って直接製造出荷してるとのこと。

「え それとこれとは なにか関係あるんですか?」

 つまり 大きな蕪の『蕪』は 株式会社の『株』に引っ掛けた駄洒落で その蕪=株 を 抜いて収穫する つまり あのCMには 『他のビール会社の株を手中に収めロシアのビールをKIRINが支配する』というメッセージが隠されていたんだッ!!!!

「な なんだってー。 あ そろそろ先生の回診の時間だから 佐々木(仮名)さんも一緒に診てもらったらどうです?」

2008-04-01(Tue) | ミドリさんのこと。 | comment : 3 | Trackback : 0 | 

うつつゆめ。

「俗に云う人間の三大欲求といえば食欲睡眠欲性欲だが その中で一番満たすべきなのは 睡眠欲に決まってるよなあ。なにしろ うまい料理もいい女も 夢の中じゃあ味わい放題だ。 食欲にしろ性欲にしろ 睡眠の中で満たすことができるんだ」

などとうそぶく知人の彼は 暇さえあったら眠ってばかりいました。

食べるものはインスタント物や冷凍食品ばかり 付き合いのある異性もあるでなし 休日は何処にも出かけず布団の中に籠もりっきりで そんな生活を続けていりゃあ 小金も溜まるだろうねえ なんて尋ねたこともありましたが そんなに貯金があるというわけでもなく 割と最低限の生活費で切り詰めた生活を送っているとか。 まったく君は なんに金を使ってるのかね。

「ああ ちょっと 夢見のよくなる薬を買ってて。 常用するとなると 存外に金が掛かるんだ」

と 彼 透き通る緑色の粉末状を オブラートに包んで ゴクリと飲下し。 ねえ君 もしかして その薬を入手するのは ちょっとした犯罪行為じゃないのかね

「んなこたないーよ 犯罪以前に こんなのが薬として常用されるって認識されないんじゃないねえ きっと。 これを飲むと いくら寝ても寝すぎても頭が痛くなることもないし 眠りが深すぎて夢を見れないってこともないし。 眠り続ける限り 醒めない夢を楽しむ事が出来るのさね」

ふうん それで副作用とかは?

「うん? あんま感じないけれど まあ 飲みすぎは毒っぽいねえ」

んでも 醒めない夢を楽しめるっていうけど もし 怖い夢を見てしまったときに それが醒めない夢だったら どうしようもないんじゃないのかね

「うーん たしかに怖い夢を見ることは あるが いいんだよ。この薬は 夢見を楽しくしてくれる 『怖い夢を見る』事自体が 楽しいんだよ たとえ醒めない悪夢だとしても 夢を見れるのなら 楽しい」

まあ 君がいいって云うんなら いいんだけれど。


彼とそんな会話を交わしたのは もう半年以上も前のことです。 ちょいとばかり連絡の取れない状態が続き 彼のこと どうしてるかなあ なんて思っていたとき ひょっこり彼が訪ねてきました。 やあ …凄いことになってるじゃないか 君だと気付くのに ちょっと時間がかかったよ 久しぶり。

「ああ ちょっと 痩せたからね」

痩せただけじゃないよ。 それに ちょっと痩せたどころじゃないよ ガリ痩せじゃないか。 鶏肋よりも 痩せぎすだよ。 ほら やっぱり 君が飲んでたあの薬の副作用的なものじゃないのかね

「んあ あの薬は もう飲んでないよ 飲んでも飲まなくても同じになったから 飲むのを止めた」

んじゃあ なんで そんなにガリガリなんですか

「そーりゃ簡単さね もうずっと 眠ってるのに眠ってないからさあ」

眠ってるのに眠ってないって どっちなんです?

「眠ったはずなのに寝た気がしない 夢を見てるのに 夢を見てる気がしない。 目を瞑ってるのに目が開いている気がする。 んー なんつか 現実が 夢に 喰われてる感じ かなあ」

なんだよ それ

「眠って見る夢が どんどん 現実と重なってくる っていうか 夢に現実が騙される 夢が現実に成りすます 夢を現実に写す 夢見ることと起きてる事が イコールになる っていうか なんだろう 言葉が纏まらなーいが」

眠っていても 起きてるのと同じってことかね

「うん 眠くなって 目を瞑る と すぐに夢の中 だけれども 夢といっても起きてるのとまるで同じ感じで さらに夢から醒めると 夢と同じ現実が続いている 夢と現実の切れ目がなくなってしまった。 例えーばだ。 俺はさっき 眠りについた筈なんだ んで 今 夢の中で お前と会話している。 で コレが夢だと気付いて 目を醒ますとだ。 夢の中でお前と会話していた筈なのに 現実にもお前と同じ会話を交わしている。 コレが夢なのか そうでないのか まるで区別がつかないんーだよ」

や 現実も夢もなにも さっきから君 僕と真っ当に会話をしているじゃないですか よって これは現実ですよ。

「いや 夢の中のお前が 何を云っても説得力はないぞ。 ああ ああ やっぱりコレも夢の中に違いない だが どうすりゃ この夢から醒めるんだ 何をやっても 夢から醒めない 現実に戻れない 何をやっても 何度もやっても 何度も死んでも死んでも死んでも死んでも死んでも ああ ああ」

そう云って彼 ふらり立ち上がり グラグラと不安定な頭(あきらかに頚椎が壊れています)を揺らし その度 割れ欠けた頭蓋の隙間から 緑色の結晶粉がサラサラ零れ。

ゆらり 歩いて 窓際 開けたガラス戸 身を乗り出して 外 真っ逆様に 地面のコンクリート 三階から。

ドスン と音がして 僕 彼が落ちた窓から下を覗くと 彼の姿は何処にもなく ただ 緑色のキラキラした粉が地面に四散しているだけでありました。

2008-03-30(Sun) | 未分類 | comment : 1 | Trackback : 0 | 

ひとのふったち。

「生き物は 長く生きると化けるっていうわね」

 と 僕の親類の娘さんであるところのミドリさん16才が 入院中 ベッドに横たわりながら云いました。 そうですね ネコも長く生きて猫又になるといいますし。 遠野物語じゃあ 寿命以上の年を経た為に化けたモノのことを経立(ふったち)と云うそうですよ。 猿の経立 狼の経立 ちょっとかわったところじゃ 鱈の経立 ってのもいるようです。 無生物の道具ですら99年で化けるんですから生き物だったらもっと化けるでしょうよ。

「この病院の初代院長さん 西幅人氏がね 『ネコも長く生きて化ける なら 人も長く生きて 化けるだろう』って考えたらしいの」

 お医者さんらしからぬ発想ですね

「西さんが云うには 生れ落ちて干支一巡りで十二年 それを十二巡して百四十四年 生きると人は誰でも 化ける のだそうよ」

 そんな長生きする人はいませんよ。 そんなに長生きした時点で その人は既に怪異です。

「うん。 でも なんだかもっともらしい説明はつけていたらしいよ えーっと なんだっけ。 そう 人には 第三次性徴期 ってのがあるんだってさ」

 第二次性徴期じゃないんですか?

「ううん? 第三次。 それがあらわれると 身体の造りが細胞単位で入れ替わり 異形異能に変化を遂げて 人間以外のナニモノかになるそうよ? で その第三次性徴が始まるのが 144歳なんだって。 んっと なんていったっけ 細胞が分裂するたびに 細胞の中のリボンみたいなやつも分かれて その度に短くなって これ以上リボンが短くできない状態になったらもう細胞分裂できなくなっちゃう ってヤツ。 テ テロリ? デロリアン? デコンメルタ? メコンデルタ? たしか そんなの。んで 身体の細胞の何十パーセントかが そのリボンが短くなっちゃって分裂できなくなったときに 第三次性徴期のスイッチが入るんだって。 それが144歳。 奇しくも かのドクター中松が 144歳まで生きる宣言をしているというのは はたして偶然の一致かしら………ッ?!」


 ただの偶然の一致です。 どちらにしても まあ 妄言でしょう そんな長生きできる人なんているわけがないので 実証しなくてもいいですものね。

「そうなんだけれどね。 で その西さん 144年も生きるだなんて悠長なこと云ってられないからって 人為的に その期間を短くしようとしたらしいのよ」

 なんだかきな臭くなってきましたな

「その細胞分裂のリボンを 一気に縮めるための薬の調合を試したらしいね。 なんでも 昔の修験者や行者が荒行をして身体を酷使していたのは 過剰な細胞分裂を自ら引き起こして第三次性徴期の発現を早めようとしたから なんて説をのたまっていたらしいよ。 それで顕れた異能の力によってさまざまな奇跡を実践したんだってさ。 役行者や空海も 第三次性徴によって力を得たのだ! なんてことを云って。 それで 非合法な薬品や行為に手を出すようになって 噂じゃあ 霊安室で死んだ患者さんの身体を使って死体蘇生の真似事までやらかしたそうよ」

 うん。 『狂気の天才科学者』から『天才』の要素と『科学者』の要素を差っ引いたような人になってしまったんですね。

「んで さまざまな試行錯誤の末 その薬は完成し 院長室で 西さんはソレを飲んだ と思われるのよ」

 思われる って?

「西さんは 行方不明になってしまったのよ。 院長室は滅茶苦茶に破壊されて いたるところに血や肉片が飛び散っていて それらの総量は致死量を越えてたらしいけれど その血や肉は西さん本人のモノだったようね。  そして 院長室を出て廊下に続く血の足跡は 地下の霊安室に通じていた…が 霊安室には西さんの姿はなかった。 それがもうかれこれ30年くらい前の話だってさ。 地下の霊安室はいまは閉鎖されて開かずの間になってる」

 ふうん 結局 西さんの薬は成功したんですかねえ?

「さあ? 失敗したんなら死んでるだろうし 成功したなら 人間以外のナニモノかになってるでしょうよ。 私は 成功したと思ってるけれど」

 成功した って そんな。 無根拠なのにどうして思えるんです?

「噂。 枕元に ナースコールがあるでしょう。 具合が悪くなったときに押すと看護士さんが来てくれるやつ。 夜中に具合が悪くなって ナースコールを押そうとしたら 枕元に なぜかナースコールが二つ ある時があって。 普通は一つしかないのに 二つあってね。 その時 どっちか一つが ナースコールで もう一つは ナースコールじゃない。 モンスターコールなのよ。 もし モンスターコールの方を押してしまったら 今は開かずの間の旧霊安室から 屍人みたいなのがやって来て モンスターコールを押した人を連れて行ってしまう というわ。 ただの噂だけれども 噂じゃすまされない行方不明事件も この病院じゃ何件か起きてるらしくってね。 真夜中 自分一人じゃ立って歩けないような患者さんが 行方不明になったらしいよ。 表向きは 都合により急遽退院したってことになってるけれども」


 こうなってくると どこからどこまでが本当なのか わかりません もしかしたら最初から最後まで ミドリさんの妄想なのかもしれません もしそうならば すぐさま看護士さんを呼ばなきゃなあ と思うのですが ナースコールを押さなきゃなあ と思うのですが ミドリさんの枕元にあるナースコールが二つあって どっちがどっちだかわからないので 押せません。



 



 

2008-03-15(Sat) | ミドリさんのこと。 | comment : 1 | Trackback : 0 | 

視えないが いるね

 知人の女性がペットを飼いはじめたようです。

「ほんっとに可愛くて可愛くて どうしようもないのね。 毛並みなんかフワフワのモコモコでいつまでも撫でていたいし 毎朝 私の顔をペロペロ舐めて起こしてくれるんだよ ふふふふ」

 へえ いいなあ。 あれ でも 君んトコロのアパートって ペット禁止って云ってなかったっけ? 引っ越したんですか?

「んーん? 引っ越してないけれど。 ペット禁止のところでも 大丈夫な動物なのね」

 え どんなのですか イヌですかネコですか それとも妄想ペットですか。

「えっとねえ どっか外国の動物で なんっていったっけかなあ ああ そうだ 『ガイアスカタス』って動物。 聞いたことある?」

 いえ 初耳です。

「ガイアスカタスは 目に視えない動物なのよ だから ペット禁止のとこで飼ってもバレないって寸法」

 目に視えない動物って やっぱりソレは君の 妄想ペットじゃないのかね。

「妄想なんかじゃないわよ ちゃんと触ってくるし ご飯もあげたら食べてるし」

 でも 目に視えない ってことは いない ってこととほぼ同義でしょう?

「んー。 でも いる のよ。 目で視えるところには いない けれども 視えないところには いる。 たとえば 死角 たとえば 眠っているとき たとえば まばたきしている一瞬の間。 目を離し 目を瞑った時だけ いる。 そんな動物なのよ ガイアスカタスって」

 随分と曖昧な動物ですね。

「曖昧だろうと何だろうと 可愛いことに変わりはないよ」

 視えないのに可愛いってわかるんですか?

「それなのよ。 モコモコの触り心地とか 私の手や顔をペロペロ舐めてくる仕草とか 私の足にクネクネ身体を絡ませてくるトコロとか 絶対可愛いに決まってるのに 私にはソレを確認する術がないのよ ああ なんていうジレンマ。 こういうのを『卵が先か目玉焼きが先か…』っていうのね」

 いわないとおもうけれども。 ええっと そんなに ペットの姿を視たいんですか?

「ええ 割と いろんなモノを生贄に捧げてもいいくらいには 視たいのね」

 うん じゃあ 僕のちょっとした思い付きなんですけれども 試してみるといいですよ。 目を瞑ったときにしか いない というのなら 目を瞑った状態で ペットを捕まえるなり抱きかかえるなりしたまま  カメラなんぞで写真に撮ればいいんじゃないですか?

「ああ なるほど。 気が付かなかった」

 そう云って彼女 早速帰ってやってみたらしく。 次の日には 来る途中に寄って来たであろう写真屋さんのレジ袋に入ったままの物を持ってきました。

「使い捨てカメラで撮ってみたよー。 写真屋さんに現像してもらったよ 早速みよう」

 写ってましたか? えーっと 写ってるのかな? なんか 君の 抱きかかえた形の腕の中に モヤモヤしたのがありますが

「うん 抱きかかえたのを 目を瞑ったまま写真に撮ったんだけれども 写ってない?」

 この写真では そうですね きっちりと姿を確認できる形では 写ってませんね 残念ながら。 かろうじて 輪郭らしきものが おぼろげながらに判るくらいです

「そう 残念ね」

 それほど残念そうな顔をしてませんよ?

「うん 姿が判らなくても 可愛いかどうか判らなくても 私が可愛がっていることに変わりはないから ね」

 君がそれでいいというのなら それでいいのだけれど。


 それで彼女 なんだか満足げな顔して帰っていったのだけれども 僕が 写真のネガを抜き取っていたことには 気付かなかったようです。

 目に見えるとき いなくて 目に見えないときに いる。 そんな反転した類のモノだからこそ ネガの方には キッチリと写っていたのです。

 触り心地はよいでしょう 全身毛むくじゃらで。 小さなネコくらいの大きさの。 ペロペロと舐めるのが好きそうな顔をしています。

 ネコとかイヌとかそういうものではない もっと 嫌悪感を催す 生理的に受け付けない 白痴めいた 中年男性の顔をした モノ。

 

2008-02-27(Wed) | 未分類 | comment : 3 | Trackback : 0 | 

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